歌手ASKA(64)が、10月5日にブルーレイ&CD「ASKA premium concert tour-higher ground-アンコール公演2022」を発売する。今年のコンサートツアーの4月13日の最終公演(東京国際フォーラム)を完全収録した。ASKA×バンド×弦楽ストリングスの三位一体による、新旧23曲を収めた。

日刊スポーツの取材に応じたASKAは、今年1月から4月までのツアーを「やり切ったことの喜びとかは、毎回同じなんですが、最終日はやっぱり特にね思うことがありました。コロナの第6波とともに始まって、よくまあ4カ月間誰もコロナが出なかったと。1人出たら(ツアーは)終わりですからね」と振り返った。

「はじまりはいつも雨」「PRIDE」などのヒット曲にクラシックの弦楽ストリングスを絡ませた構成。「まあ、すごい。やっぱり、こんなことをできる、させてもらえるっていうのは幸せなことだと思います。だって、大所帯ですよ。宿泊、ギャラ、初日は前日の大雪で車を途中で乗り捨てて電車で府中まで移動した(笑い)。だからね、こういうことをさせてもらえたっていうことを喜びと、それを最後まで達成できたっていう、やり切った感が最終日はありましたね」。

その思いがブルーレイ&CDに詰まっている。「もう完璧。実は作品が出来た後に3回見たんですよ。3回とも自分の作品でありながら、3回が3回ともやっぱり感動するわけですよ。これはちょっと、メンバーたちと共有しなきゃと思って、すぐメンバーに連絡したんです。それで会場を借りて、スクリーンでメンバーみんなで見たんです。やっぱり、普通のコンサートとは違う。よくここまでくぐり抜けてきたよねっていう喜びと、最後まで付き合ってくれてありがとうと言う気持ち。だから作品ができたからみんなで見ようって。メンバーたちは、ツアーの最中に僕の後ろ姿を見て演奏してるんです。だから今回この作品を、みんなで前から見たってのは、すごくうれしかった」

ダウンタウン松本人志(59)とナインティナイン岡村隆史(52)が、今月11日放送のフジテレビ「FNSラフ&ミュージック2022~歌と笑いの祭典~」の生放送で、CHAGE and ASKAのものまねをして「YAH YAH YAH」を歌った。

ASKAは「パッと見た時に、まっちゃん(松本)と俺、作りが似てるのかなと思った。まっちゃんに、このブルーレイを見てもらわなくちゃ、送らなきゃだめだ。あと岡村君と中居(正広)君。あ、矢部(浩之)君も『オールナイトニッポン』で、しょっちゅう『ひとり咲き』をかけてくれていたからね」と笑った。

現在、64歳。「僕はね、自分でも意識していて、声が出なくなったっていう時期があったんです。まあ、今でも若い頃比べると、出てませんよ。だけどね、剣道を再開して丸5年になるんですよ。なんか、体が変わったような気がするんですよね。声が今、また戻りつつある気がしてる。健康だけじゃなく、精神的なものもね」。

10月29日には東京国際フォーラムで「GET THE CLASSICS『ASKA Premium Symphonic Concert 2022-TOKYO-』」を開く。

「僕は学生の後、お勤めをしたことがないんですよね。学生から、そのまま歌の世界に入って、結局は趣味の延長上が仕事になったので楽しいですよね。でも、それが仕事であり、こんなに長くやらせてもらってることの喜びは本当にあります。逆に言うと40年以上も歌い続けてこられたっていうのは、すごいことだと思う。そういう意味では、もう本当に感謝しかないですよね」。

歩んできた軌跡をたどる若者もいる。

「後継者の育成みたいなことは考えてないです。僕の周りにいる若い子たちは、後継者っていうことじゃなくて、自然に身につくものがあると思う。近くにいると分かると思うので、どんどんそれは盗んでいってほしいなと思うんです。それは剣道でもそうですよね。技を教えても、できない子はできないんですよ。見てるだけで、一発でできる子がいるんです。そういう人たちが、僕の音楽で感じたものを、紹介していってくれればいいなと思いますね」

自身の音楽活動とは別に、ミュージシャン仲間に呼びかけて、小児がんに対する支援のゴールドリボン基金のチャリティーコンサートを今年4月に行った。

「この業界にデビューした頃は、チャリティーに手をつけると、必ず失敗してダメになっていくって、ずっと言われてきたんです。そういうもんだろうなと思って、僕らもチャリティーとかだけはやらなかったんです。でも、89年にロンドンに行ったら、向こうのミュージシャンのチャリティー精神って日本と比べると、まるっきり考え方が違う。福祉の国なので、いろんなイベントがあって、チャリティーでとにかくみんな集まるわけですよ。それで、日本に帰ってきて、俺たちにできることやれないかなって。まあ、誤解されてもいいから、やってしまうよっていうことでね」

ここ2年半、世界はコロナ禍で停滞を余儀なくされた。

「僕はミュージシャンっていうことをやり遂げるために、とにかく3年後のスケジュールを出して決めていこうとしているんです。その3年後まで埋まってるスケジュールを見ながら、それが目標になっている。歌詞と一緒ですよね。タイトルがあったら、行き詰まった時に、自分が何を言おうとしてるかタイトルを見ればいい。そこに戻れば、何度でも戻れば、軸がはっきりしてくる。3年先っていうのは、タイトルみたいなものなんですよ。活動の軸ですよね。そこは見ながらちゃんとやりたい。3年先の活動のイメージっていうのはできています」

オフの時は、ドラマ、映画を見まくっている。

「寝てりゃいいのに、自分で忙しくしています。テレビだけじゃなくて、Netflixとかディズニーとか全部入ってますね。僕は本当に人の音楽を聞かないのでダメだなと思うんでけど、ドラマや映画で流れるものは聞いています。アメリカ、韓国、オーストラリア、ヨーロッパのドラマや映画で流れる音楽は、すごい刺激になりますね。今はドラマなんかに流れる音楽にマイクを向けると、タイトルが分かるアプリがある。そのタイトルを見て、YouTubeで探して、よかったらアルバムをダウンロードとかしている。そういう音楽の接し方ですね。それが僕の唯一の音楽との接点ですね」

音楽を作り、歌い続けてきた。そして、これからも音楽を作り、歌い続けていく。【小谷野俊哉】