音楽家の坂本龍一(70)が11日正午(日本時間)9月中旬に無観客で事前収録したピアノ・ソロ・コンサート「Ryuichi Sakamoto:Playing the Piano 2022」を世界約30の国と地域に配信した。がんで闘病中で、配信にあたり「この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」と語ったこともあり、1回目の配信は同時視聴が3万人を超えた。来週に中国本土でも配信を予定している。

坂本は14年に中咽頭がんを患い、寛解も21年1月には直腸がんの治療を公表。さらに6月発売の文芸誌「新潮」7月号で、がんがステージ4で、直腸の原発巣と数カ所の転移巣を摘出する20時間に及ぶ外科手術を受けたと告白。さらに21年10月と12月に受けた両肺に転移した、がんの摘出手術など、1年間に大小6つの手術を受けたと明かした。

ピアノ・ソロ・コンサートは、コロナ禍の20年12月12日に都内で無観客&ライブストリーミング配信して以来2年ぶりだった。坂本は「ライブでコンサートをやりきる体力がない。この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」とし「日本でいちばんいいスタジオ」と折り紙をつける東京・渋谷のNHK放送センターの509スタジオで収録。1日に数曲ずつ丁寧に演奏と映像を収録し、十分な時間をかけて編集し配信した。

ライブでは、71歳の誕生日を迎える来年1月17日にリリースする、約6年ぶりのオリジナルアルバム「12(トゥエルブ)」の収録曲を含む13曲を演奏。78年結成のイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の代表曲「東風」、88年に日本人初の米アカデミー賞作曲賞を受賞した「ラストエンペラー」、映画に初出演し、映画音楽も初めて手掛けた大島渚監督の83年「戦場のメリークリスマス」といった、往年の名曲を演奏した際は笑みを浮かべた。

坂本は演奏後「初めてピアノソロで弾く曲も、ずいぶんあってアレンジ、選曲も慎重に時間をかけてやった。自分としては、ここにきて、割と新境地かなという気持ちもあります」と感慨深げに語った。

○…関係者によると、配信ライブの収録を機に主要メンバーを米ニューヨークから招集した映画製作チームが結成されたという。単に配信映像を作るためだけでなく、後に「コンサート映画」を別に編集する予定で、そのために「演奏する坂本龍一」を丹念に撮影したという。また、この日の配信ライブは東京・町田市の映画館109シネマズグランベリーパークのプレミアムサウンドシアター「SAION(サイオン)」で全世界独占でのライブビューイング(全2回、各回214席限定)も行われた。