近未来の都会のイメージを決定づけたのは41年前の「ブレードランナー」だと思う。対して今作では、まるで山水画のような田園風景にドーム形の建物が散在する。空からは滝のような破壊ビームを打ち降ろす巨大な飛行物体が現れる。

「ローグ・ワン」で仕事人ぶりを見せつけたギャレス・エドワーズ監督が描く近未来は、大自然を巻き込んで息をのむ。進化したAIがロサンゼルスに核爆発を引き起こす発端は「ターミネーター」をほうふつとさせるが、そこから先はまったく趣が違う。

世はAIせん滅を目指す西洋とAIと共生する東洋に分かれ、西側が一方的に攻撃を続けている。AI側の要である「創造者」暗殺を命じられた元特殊部隊員(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、その姿が愛らしい少女(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)だったことにあぜんとし、しだいに守る側にまわることになる。

人間の形をしたAIには邪心がなく、むしろ自然と共生している。「ターミネーター」とは正反対に、私欲で環境破壊する人間(西側)の方が恐ろしいとこの作品は印象づける。AI側の「キーマン」を演じる渡辺謙に存在感がある。【相原斎】

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