不思議な舞台を見てきた。東京・DDD青山クロスシアターで上演中の「みんな出ておいで~」だ。

ホールの真ん中に、まるでプロレスのリングを一回り小さくしたようなステージ。客席は四方にせり上がって設置されている。演者は設置された階段を使って出入りしながら、360度から見られながら芝居をする。

物語の舞台となったのは戦国時代、1570年代の伊勢長島一向一揆。織田信長に敵対する一向宗の信者たちは大阪の本山、石山本願寺から派遣されてきた坊官の言葉を信じて、ひたすら阿弥陀仏を念じれば、死んでも極楽浄土へ行けると信じている。そして、天下を手中に収めつつあった織田信長と敵対する。

戦国時代が背景といっても、激しい戦闘シーンがあるわけではない。一向宗側の場面では、ステージを海の潮の流れを見る矢倉に見立てたステージで、360度の芝居を演じる。織田陣営では、柴田勝家と羽柴秀吉のコミカルなやりとりも演じられる。そして双方に通じる間者。裏切り、あの世と現世と、幾層にも重なった世界観が演じられる。

出演は9人。演出も担当する植木祥平(41)は、斎藤道三に仕えたが主家滅亡後は浪人して一向一揆に身を投じた日根野備中役。

長島の一向宗の民である一馬、辰次郎兄弟は高野春樹(44)と田島亮(36)。そして、死んで極楽浄土へ行くことを願うヒロインなみを七木奏音(27)が演じる。

大阪の石山本願寺からやってきた僧侶であり武将の坊官・下津豊前を生島勇輝(40)。父が亡くなり、長島にある一向宗の願証寺を継いだ顕忍を山口貴也(27)。そして、一向宗側、織田型双方に通じる源蔵を岡田優(38)が演じている。

織田方の柴田勝家を君沢ユウキ(39)、豊臣秀吉を大朏(おおつき)岳優(25)がテンション高く演じている。

下津豊前を演じた生島は「演出の植木とは、映画『図書館戦争』で共演してから10年来の友人。その植木が、信頼してるやつを集めた。本当に十人十色というか、色が全然違う役者が集まってるので、それがすごい面白い。お客さんが360度から見られるのも、新たな挑戦」と話している。

見る位置によって全く違う芝居になるかも知れない。

10日まで上演中。

【小谷野俊哉】