歌舞伎俳優中村東蔵(78)が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。15日、文化審議会が馳浩文科相に答申した。東蔵は「大変にうれしいです。亡くなった6代目中村歌右衛門の師匠も喜んでくださると思います。半面『おまえさんが!?』と笑われてしまうかも」と喜んだ。

 日本舞踊家で女優の故藤間紫さんを姉に持ち、幼い時から、舞台や映画で活躍してきた。23歳の時に歌右衛門さんの芸養子になり、歌舞伎座で中村玉太郎を名乗り初舞台、67年東蔵を襲名。女役、立役の両方で定評があり、「近江源氏先陣館 盛綱陣屋」の母微妙(みみょう)、「双蝶々曲輪日記 引窓」の母お幸など、最近では老母役で高く評価されている。深い情感が見える芝居は、観客を引き込む。歌舞伎座で公演中の「柳影沢蛍火」では、徳川綱吉の生母桂昌院を初役で務めている。

 東蔵は「ただただ芝居が好きでやってきました。身を委ねているうちにこうなりました」と、自然体で歩んできたとした。