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混沌とエネルギーが弾ける、『バーム・イン・ギリヤド』
2008年04月07日 16時44分 [演劇]
『バーム・イン・ギリヤド』開幕 撮影:島田麻未

世界中で数々の名作を手掛けてきた演出家ロバート・アラン・アッカーマン。日本でも『蜘蛛女のキス』『エンジェルス・イン・アメリカ』など、綿密で知的、しかも燃焼度を失わない舞台を数多く演出している。その彼が日本での新たなる創作活動をスタートした。目指すは“現代日本を反映した日本の演劇を世界に発信していくこと”。アッカーマン率いる劇団“the company”の公演『バーム・イン・ギリヤド』が4月4日、東京・新宿シアターモリエールにて初日を迎えた。

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開場時間を過ぎて間もなく、舞台であるコーヒーショップに出演者が訪れ始める。薄汚れて疲れたアメリカンコーヒーショップ。それでいてどこか居心地良さげな雰囲気もある。店に訪れた出演者たちは思い思いにタバコを吸ったり、小声話して笑ったりしている。コーヒーショップはまだ本来の時間を迎えていないのだ…。

やがて、音楽と共に30名の出演者たちは一斉に客席に流れ込み、アジテーションを始める。
「あんた、タバコ吸う?持ってたら、一本くれないか?…何だよ!けち臭い!!」
各々の役柄として、客席の一人ひとりに語り掛けていく。 

舞台はそのテンションのまま始まる。コーヒーショップは本来の時間を迎えた。あちらこちらで重なるように展開する会話。その全てを聞き取ることはできない。それでも徐々に各々の立場や抱えている問題が見えてくる。ジャンキー、娼婦、男娼、ホームレス。そのコーヒーショップは町の底辺で生きる者たちの溜まり場だ。

ヤクの売人になるべきかを決意出来ずにいるジョー(パク・ソヒ)とシカゴから着いたばかりだというダーリーン(宮光真理子)。ふたりはそのコーヒーショップで出会い、恋に落ちる。やがて、ジョーは「ヤクの売買をやめる」と決意するが…。

アッカーマンの演出は単に物語を伝えようとはしない。重要なシーンに別の会話を重ねたりする。そうかと思えば、モノローグや歌で各々の現状や心情を語ってみせる。この舞台で重要なのは物語を描くことより場の混沌やエネルギーを表現することなのだ。物語を追うだけでは演劇もTVドラマや映画と変わらない表現手段になってしまう。演劇には場で生じる生身のエネルギーの混沌や調和を味わうという楽しみ方もある。そんなことを思い出した。

舞台は多くの瞬間喧噪に覆われていた。彼らは孤独を埋めるためにコーヒーショップに集い、無駄話を繰り返し、時には取っ組み合いのケンカをする。抜け出しようのない悪循環の中に彼らはいる。けれども、何故か彼らが絶望的には思えなかった。それは彼らが常にエネルギッシュで、乱暴な形であるとしても互いにコミュニケーションを取ろうとしているからなのだろう。自分の殻に引きこもったまま、他人とコミュニケーションを取れずにいる日本の一部の若者よりも、彼らの方が遥かに明るい悪循環の中にいる様に思えた。

本公演は4月20日(日)まで行われる。

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