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舞台『容疑者χの献身』にあふれる涙の理由とは?
2009年04月20日 16時52分 [演劇]
キャラメルボックス『容疑者χの献身』
キャラメルボックス『容疑者χの献身』 撮影:伊東和則

東野圭吾の傑作推理小説「探偵ガリレオ」。そのシリーズ第3弾で、映画でも絶大なる人気を博した『容疑者χの献身』が演劇集団キャラメルボックスによって舞台化され、4月18日、新神戸オリエンタル劇場で開幕した。

脚本・演出の成井豊は、原作への愛とも言える思いが伝わるほど忠実に舞台化し、しかし舞台ならではの脚色や構成を実に巧みに展開させた。登場人物たちの細やかな感情の機微を直球で受け止めた客席からは嗚咽の声が響き、これまでの劇団のカラーとは異なる作品への挑戦でキャラメルボックスは新たな一面を見事に切り開いた。

高校の数学教師・石神哲哉(西川浩幸)はある夜、アパートの隣人・花岡靖子(西牟田恵)の部屋から不審な物音を聞く。やがて、旧江戸川の河川敷で男の死体が発見される。男の身元はすぐに判明し、捜査線上に被害者の元妻である靖子が浮かび上がるが、彼女にはアリバイがあった。捜査に乗り出す刑事・草薙俊平(斎藤歩)は、大学時代の友人で物理学者の湯川学(岡田達也)に協力を求める。草薙から靖子の隣人である石神の名前を聞いて湯川は顔色を変える。石神は湯川の大学時代の友人で、湯川が出会った中で最高の頭脳を持つ男だった……。

舞台上では登場人物の台詞以外に、役者が実際の小説本を手にして地の文も語り、登場人物を見守っていく。成井の演出は特殊効果に頼らず、登場人物と実際に紡ぎだされる言葉に焦点を当てたことで、小説の持つ圧倒的な世界観を率直に舞台に描き出した。それは重厚だがシンプルな舞台美術(伊藤保恵)や本作のために書き下ろされたインストゥルメンタルの曲(木原健太郎/他)ともバランス良く共鳴し、クライマックスに向けて観る者の心を揺さぶっていく。

役者陣では膨大な数の台詞を操る岡田と斎藤、重い話になりがちなところを情感やユーモアを添えて全体を支える間宮刑事役の川原和久など、全ての役者が個々の登場人物のキャラクターを的確に活かして好演。その中でも特筆すべきは、物語の終盤で真骨頂を魅せる西川と西牟田だろう。ともすれば救いのない結末ととらえられる一方で、ふたりの等身大で体当たりな演技は、実際に描かれてはいないが、ここから彼らの新しい人生が始まっていくのではないかと再起の可能性すら想像させてくれるのだ。

自分はこんなにも誰かを愛することができるのか――観劇後に「できるかもしれない」と思えるのは、原作の力はもちろんだが“人が人を思う気持ち”にこだわり続けてきたキャラメルボックスが作り上げた舞台だからに違いない。この舞台こそ「献身」という言葉に秘められた究極の愛の形をライブで体感できる絶好の機会だ。

ツアーは4月26日(日)まで新神戸オリエンタル劇場にて、4月30日(木)から5月24日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演される。チケットは現在発売中。

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