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演 劇
黒木メイサ主演舞台「女信長」が6月5日、東京・青山劇場で幕を開けた。
●初日レポート
テンポの良いアクションと共に紐解かれる、奇想天外な歴史絵巻。原作は佐藤賢一の同名小説。「織田信長は実は女だった」そんな意表を突いた設定と、歴史上の史実が見事にすんなり融合していく。黒木メイサ演じる信長は、女である“御長(おちょう)”を封じ、亡き父の命により男“信長”として生きている。そんな信長を面白がり、後ろ盾となったのは斉藤道三(石田純一)。道三に娘・御濃(有森成美)を“妻”として与えられ、かつ代償として“女”を開花させられた信長は、その後“女”を武器にしながら戦国の世を駆け上がる。桶狭間で今川義元(細貝圭)を破り、徳川家康(山崎銀之丞)や、柴田勝家(市瀬秀和)、羽柴秀吉(TETSU)ら家臣の心をその美しさと強さで掌握していく。しかし若き浅井長政(河合龍之介)に会い初めての恋に落ちてしまう。そしてもうひとり、明智光秀(中川晃教)もまた、信長を愛していた……。
壮大な戦国時代を思いも寄らぬ角度から紐解くストーリーは、岡村俊一演出で華々しく、かつスピーディに展開していく。たんなる“トンデモ”な話ではない。なぜ桶狭間で信長は勝ったのか? なぜ信長は癇癪持ちと言われたのか? なぜ本能寺で信長は死ななければいけなかったのか? これらの謎が、全て“信長が女だったから”ということですんなりと説明が付いていくのだ。この説得力が、舞台の世界観から観客を醒めさせない作用を持つ。
しかしこの舞台のメインはやはり、“黒木メイサ”を全方位から堪能できる、これに尽きるだろう。演劇界の中でも屈指の身体能力で、ふんだんに盛り込まれたアクションシーン、ダンスシーンの見事さは言わずもがな。また、年を経るにつれ女として揺れ動く心に苦悩する、その表情の豊かで見事なこと! 今回は舞台上でさまざまな男性キャストとの濃厚なラブシーンにも挑戦。そして光秀役の中川晃教の見事な歌声が、青山劇場の空間をこの「女信長」の世界へと染め上げていく。このふたりの顔合わせにも注目だ。
これまでにはなかった“信長像”を想像させるエンタテインメントとしても楽しめるし、一方で女性が男社会で生きていく苦悩、問題を描き出した作品としても見ることができる。自身の幸せと天下太平という大義の狭間での信長の苦悩は、仕事や理想と個人の間で揺れ動く現代の女性にもまったく通じるものがあるからだ。考えさせられると共に、信長のりりしさに勇気を貰える作品へと仕上がっている。
公演は6月21日(日)まで。その後、6月26日(金)から28日(日)まで大阪・シアターBRAVA!で行われる。
(取材・文:川口有紀)
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