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The Musical『蜘蛛女のキス』が1月16日、大阪の梅田芸術劇場 メインホールで開幕した。同作は2007年に初演、今回は『キャッツ』でグリザベラを700回にわたり演じた金志賢や、シルク・ドゥ・ソレイユ初の日本人ダンサーとして活躍した辻本知彦など、一部キャストも新たに変更し上演される。約2,000席の大半を占める女性客に交じり、客席にはカップルや男性客の姿も。初演からのファンが多いのか、ロビーでは早くも作品や演者について意見を交わす観客の姿も見受けられた。期待感でほどよく会場が温まる中、オーケストラの生演奏を合図に初日の幕が開いた。
The Musical『蜘蛛女のキス』、その他大阪初日の舞台写真
看守の怒号と囚人らの呻き声が響くここは南米のとある刑務所。薄闇の中、現実と幻想の住人が渾然一体となり立ち現れる。若き政治犯ヴァレンティン(浦井健治)とゲイの囚人モリーナ(石井一孝)、モリーナの心の支えである映画スター「オーロラ」と死の象徴「蜘蛛女」(オーロラと2役、金志賢)。とりわけ鮮血のように赤いライトをまとう蜘蛛女と、カタカタと古い映写機が映し出す笑顔のオーロラとの対比は、これから始まる複雑な物語を予感させ象徴的だ。病気の母が気がかりなモリーナ、恋人や仲間を想うヴァレンティン、政治犯の情報をつかみたい刑務所長。所長との裏取引で「出所」を条件にヴァレンティンから情報を聞き出そうとするモリーナだったが……。
1幕ではそれぞれの心情に細かく迫りつつも、多彩なナンバーと共に場面はテンポ良く展開する。その都度、七変化するオーロラ/蜘蛛女の衣裳も見もので変化に富み、飽きさせない。そうして蜘蛛の巣の如く張り巡らされたそれぞれの思惑が、もつれ合い絡み獲られるのが後半。物語は劇的に進展する。
2幕では登場人物らの偽らざる心情が明かされ、幕開きから次々と印象的なナンバーが続く。中でも金が歌い上げるオーロラのナンバー『Good Time』、浦井によるヴァレンティンの自分史『Day After That』、石井がモリーナとなり涙ながらに歌う母へのナンバー『Mama It’s Me』などは、この1曲を聴くだけでも見に来た甲斐があると思わせる圧倒的なスケール感に震える。いつしか深い絆で結ばれていくモリーナとヴァレンティン。そんな折、モリーナの出所が決まる。ふたりはそれぞれの思いを胸にある決断を下す。果たしてふたりを待ち受ける運命とは……。
大フィナーレは劇場でご堪能いただくとして。迎えたカーテンコール。2度3度と鳴り止まぬ拍手と晴れやかな演者の表情が、再演の出来栄えを何よりも雄弁に物語っていた。ラテンアメリカを代表する作家マヌエル・プイグのベストセラー小説を基に、映画版はアカデミー賞を受賞、ブロードウェイではトニー賞7部門に輝いた世界的名作。期待を裏切らない感動の舞台はぜひ劇場で体感して欲しい。この後、1月24日(日)から2月7日(日)まで東京芸術劇場 中ホールで上演。東京公演のチケットは現在発売中。
取材・文:石橋法子
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