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長塚圭史率いる阿佐ヶ谷スパイダースの新作『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』が、1月21日からのプレビュー公演を経て、26日、東京・本多劇場で本格的な初日を迎えた。長塚は2008年9月から、文化庁の新進芸術家海外留学制度によりロンドンへ1年の留学をしており、この作品が帰国後第1作ということもあって演劇界の注目を集めた。舞台の手触りは、セット、小道具、音楽がほぼ使われずもの静かな印象。しかしながらその内容は、容易に言葉に置き換えられない作者のメッセージが無数に散りばめられた刺激的なものになった。(※以下の文章は公演内容に触れる箇所があります)
新作を上梓したミステリー作家の葛河(光石研)は、人形作りにご執心の妻(村岡希美)が持っていた紙切れを手がかりに、新作を酷評している書評サイトを見つけてしまう。苛立った彼は担当編集者の野口(池田鉄洋)をバーに呼び、泥酔。店内にいた熱心な自分の愛読者の女・満智子(小島聖)と意気投合した葛河は野口を先に帰したあと、彼女を階段から突き落とす事故を起こしてしまい……。
登場人物が奇妙である。胎児の形をした人形を作る葛河の妻・悦世、葛河を誘うようなミニスカートを悦世に穿かせられている家政婦・希緒(内田亜希子)、人形作りの先生で医師でもある梶原(加納幸和)、忽然と消えた被害者・満智子と葛河の動機を執拗に追う刑事・安倍(中山祐一朗)、その後輩で飼い猫失踪に動揺する妻を心配する若山(山内圭哉)、正体不明の男女(伊達暁&馬渕英俚可)。観客は葛河を中心に物語を追っていくと、殺したはずの満智子が葛河の前に現れ、彼の心や作品世界に揺さぶりをかけるあたりでそれぞれの登場人物の虚実が入り乱れ、時間と空間にブレが生じてくるのがわかる。探している猫の行方は? 空転する殺人未遂の捜査は? 何故、妻は胎児の人形を作るのか? 作家の観念と実態とは? 様々な疑問や葛藤を抱えた登場人物の姿から、作者は観客に「あなたの今いる世界は確かなものなのか?」という強烈なメッセージを叩きつける。
鋭い問題を投げかける長塚が“(世界で何が起きているか)わからない感覚は、皆どこかで体感している”という内容のセリフを何度も入れたのは、観客を決して突き放しはしないという愛情からだろうか。人生はおとぎ話。劇中の風変わりな登場人物たちは、明日のあなたの姿かもしれない。東京公演は2月14日(日)まで上演。以降、2月16日(火)に広島・アステールプラザ大ホール、2月18日(木)・19日(金)福岡・ももちパレス 大ホール、2月23日(火)・24日(水)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、3月6日(土)愛知県勤労会館と、各地を回る。チケットはいずれも発売中。
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