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京都を拠点とする劇団、ヨーロッパ企画の本公演『サーフィンUSB』が8月4日、東京・本多劇場にて開幕した。
『サマータイムマシン・ブルース』や『曲がれ!スプーン』の映画化により、全国的にその知名度を確実に高めているヨーロッパ企画。そんな彼らが、ついに演劇人の夢の舞台・本多劇場へと初進出を果たした。舞台サイズはこれまでに比べ大きめ。しかし作・演出の上田誠が生み出す、彼ららしいテレビゲーム的な世界観は揺るぐことはない。今回もちょっと変わった設定の中、市井の人々の、モソモソとした会話が展開されていくのである。
舞台はサーファーたちが集まる海べり。だがそこは青い海が広がる海岸ではない。コンクリートに囲まれ、近くには工業排水も流れる都会の海である。どうやらある自然災害に見舞われたことで、多くの人々は自然と決別。最新技術を集約した、“アキハバレー”と呼ばれるドームの中で暮らすようになったらしい。そんな“アキハバレー”での暮らしを拒んだのが、この海べりでサーフィンをしながら自由に生きる人々。しかしそんな彼らのもとに、“アキハバレー”で働く男たちが、あるビジネスチャンスをもって現れ……。
タイトルの『サーフィンUSB』が気になっていたが、なるほどまさに“サーフィンUSB”である。今どきUSB端子さえついていれば、パソコンに繋いで何だって出来てしまう。そこで現れたのが、USBに対して絶対的な信頼を寄せるIT世代な人々と、その波に乗れないままのアナログ世代な人々。だがそんなアナログ派な人々も、得意のサーフボードさえあれば、ITの波にだって乗れてしまう。それらを比喩的に表現しているようで、ズバリそのもので示すのが、この“サーフィンUSB”。その答えは、ぜひ劇場で確認していただきたい。
現代技術を多用した生き方と、自然のままに過ごす生き方。その両極を本作では登場させているが、だからといってヨーロッパ企画が、何か社会的なメッセージを投げかけてくるということはない。もちろんこれは褒め言葉で、ただ目の前で繰り広げられる、群像会話の面白さを楽しめるのが、ヨーロッパ企画の何よりの魅力だからである。しかも役者はすべて劇団員。そうでなければ、あののほほんとした味わい深い空気感は出すことが出来ない。そう、ヨーロッパ企画はクセになる劇団なのだ。
本多劇場公演は8月15日(日)まで。その後8月20日(金)・21日(土)に大阪・サンケイホールブリーゼ、8月28日(土)・29日(日)に福岡・ももちパレス 大ホール、8月31日(火)に広島・アステールプラザ 大ホール、9月3日(金)に愛知・名古屋市青少年文化センター アートピアホールにて行われる。チケットはいずれも発売中。
(取材・文:野上瑠美子)
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