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ハリウッドのトップスター、ジュリー・アンドリュース(『サウンド・オブ・ミュージック』『メリー・ポピンズ』)が主演し、アカデミー賞で7部門ノミネートを成し遂げた映画『ビクター/ビクトリア』(1982年)。その後1995年にジュリー自身の主演で舞台化され、またもや大ヒットとなった作品の日本版が、貴城けい他豪華キャストで上演中だ。主人公のビクトリアは、ひょんなことから男性を装い、さらに女装のショースターとして人気を集めるという役。元宝塚トップスターで現在は女優として活躍する貴城にハマり役で、7月16日に開幕した東京・ル テアトル銀座は温かい笑いに包まれている。
舞台は1930年代のパリ。売れない歌手のビクトリア(貴城)は、偶然出会ったゲイの芸人トディ(下村尊則&岡幸二郎のWキャスト)の部屋に転がり込む。そこで男物のパジャマを着た彼女を見てトディが思いついたのが、“ビクトリアをゲイの男爵・ビクターに仕立て上げ、さらにショウ・ガールを演じさせる”というもの。もくろみは当たり、妖艶なスターがショーの最後にハンサムな男性に戻る仕掛けはパリ中の話題に。そんなビクターに一目惚れしたのが、マッチョなシカゴギャングのキング(葛山信吾)。「俺が男を愛するわけがない!だからお前は女だ!」と言い張るキングに困りつつも次第に惹かれていくビクトリア。だがキングの恋人で金髪美女のノーマ(彩吹真央)の怒りは収まらず……。
元々はジュリーの夫で映画監督のブレイク・エドワーズが、「女性らしさに少々欠ける」妻にぴったりな映画をと企画した物語。華やかなショーのシーンや、男性として颯爽と振舞うビクトリアなど見どころ満載だが、本作の軸となっているのは登場人物たちの人間的な魅力だろう。貴城は仕事を通して自己実現を初めて得るものの、その仕事と恋の間で揺れ動くビクトリアを生き生きと表現。トディ役の岡は母性ともいえる温かい愛でビクトリアを支え、葛山は“男を愛してしまったかもしれない”自分に誠実に向き合う男性としてキングを演じている。彩吹扮するノーマも、ちょっと頭は足りないが恋に一所懸命で憎めない女性としたところに巧さがある。
開幕前の会見では、「愛があふれている作品」と話した貴城。「物語の中にいろんな人の人生が詰め込まれています」(葛山)、「人が人を愛することは素晴らしいなと」(下村)、「ミュージカル・コメディならではの楽しさがいっぱい」(岡)、「性別を越えた、人間同士の愛情が描かれている」(彩吹)など、キャストがそれぞれに本作への想いを語った。「元男役として燕尾服のほうが落ち着くというのはありますが、男女2役ではなく、あくまでビクトリアの生き方を演じているつもりなんです」という貴城の言葉こそ、本作が人々に愛され続ける魅力を伝えているだろう。
公演は7月24日(日)まで、ル テアトル銀座で上演。7月30日(土)から31日(日)には大阪・森ノ宮ピロティホールで公演。
取材・文:佐藤さくら
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