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言葉に色がつく世界? 藤井隆らが演じる『イロアセル』の稽古場に潜入!
2011年10月05日 11時50分 [演劇]
『イロアセル』の稽古風景 左から木下浩之、藤井隆、小嶋尚樹
『イロアセル』の稽古風景 左から木下浩之、藤井隆、小嶋尚樹

新国立劇場が2011/2012シーズンで打ち出した、〈【美×劇】−滅びゆくものに託した美意識−〉。繁栄するものより滅びゆくものに向く日本人独特の美意識を探究する本シリーズは、『朱雀家の滅亡』を皮切りに先月スタートしたが、続く第2弾『イロアセル』の準備が佳境だ。開幕まで間もない稽古場を見学した。

新国立劇場演劇『イロアセル』チケット情報

『イロアセル』の最大の特色は"色"。舞台となるのは、発する言葉にその人固有の色(黒の5番、というように)を持つ人々が暮らす島だ。彼らがセリフを発するたびに色で包まれる様を、照明や映像を駆使して可視化するという。倉持裕が書き下ろしたSF的とも寓話的とも言える設定が舞台でどう具現化されるのか、大いに興味を抱いていた。稽古場に入ると、天井に地球を模した大きなスクリーンのようなものがある。これと、舞台奥にある障子のようなセットに、色が映し出される仕組みらしい。ほぼすべてのキャストがハンドバッグのようにぶら下げている"ファムスタ"という架空の機械(色を集めたり調整する機械という設定)が、異彩を放っている。

物語は、島の外から色を持たない囚人と看守がやって来るところから始まる。舞台中央にベッド、机、便器のみが据えられた鳥かごのような檻があり、囚人役・藤井隆の演技スペースはこの狭い空間のみ。「動きのテがなくてかわいそうだと皆さん言ってくださるんですが、僕にすれば元々テがないというか、お芝居として効果的に動くってことができないから、『大変よねえ』と思ってもらえるのはかえってありがたい(笑)」(藤井)。だがその分、豊かな表情が際立つ。彼の前では自分たちの色も消えると知った島民たちは次々と面会に訪れ、普段はできない打ち明け話をして帰っていく。「いい大人たちがついはしゃいじゃったりする姿が、檻の中から見ていて愛おしく感じてしまう」と藤井。面会の場面は信者が神父に告解するような、どこか神聖な儀式にも見えてくるから不思議だ。どんな罪を犯したのかは明かされぬミステリアスな囚人はその後、責任感のない無色透明な言葉で、島の人々を確実に変化させてゆく……。頭から3幕手前まで約1時間。演出席の鵜山仁からストップの声が聞かれることはなく、順調な仕上がりがうかがえた。

言葉に色があるという設定は突飛に聞こえるかもしれないが、藤井はこう話す。「ブログで書いたことが残り続けることなんかも似てますよね。感覚のゆるい人が無記名で他人を批判してたりするのを見るとすごく不愉快になるんですけど、この島の人たちは逆に言葉への責任感でがんじがらめになっている。単純にどちらがいいとは言えないけど、自由に慣れてしまった中での人間の醜さみたいなものを思い出させてもらった感じがします」。この奇妙な世界に日常的な何かを見出せれば、途端に"自分たちの物語"と成り得る画期的な風刺劇。色鮮やかな完成品が待ち遠しい。

ほかに島田歌穂、加藤貴子、剣幸、ベンガルらが出演。『イロアセル』は10月18日(火)から11月5日(土)まで新国立劇場 小劇場で上演。チケット発売中。

取材・文:武田吏都

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