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いのうえひでのり演出、古田新太主演で今再び甦る、伝説的ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』。その熱狂的なファンでもある彼らが、いかに作品と対峙しているのか。11月某日、都内にある稽古場を訪れた。
「デタラメはデタラメなんですけど、やっぱり楽曲が素晴らしいなっていうのは改めて思いましたね。後半のバラードとか、コーラスが恐ろしくきれい。感動する要素は何もないんですけど(笑)、音楽の力のみで無理矢理感動させる。でも『ロッキー〜』と言えばやっぱり、前半の『タイム・ワープ』と『スイート・トランスヴェスタイト』。盛り上がり的にはここが一番」
そう古田が語る『タイム・ワープ』の導入部分から、この日の稽古はスタートした。笹本玲奈演じるジャネットと、中村倫也演じるブラッドが、古田演じるフランク・フルターの城へと足を踏み入れてしまうシーンである。商業ミュージカル界のヒロインと、ストレートプレイ界のホープ。この2人がアングラ臭漂う本作にどう挑むのか、正直不安もあった。しかし逆に若く、すれていない2人の存在が、この作品世界ではいい意味で異彩を放つ。そしていのうえの演出は徹底して細やか。「ここ2歩で振り返って」といった動きの指示から、「倫也は素直過ぎる。もっとカッコつけてるぜ!ってトーンで」などの感情表現まで、ひとつひとつの画を吟味するかのように芝居を形作っていく。
そして「タイム・ワープ」は本作一番のダンスナンバー。リフラフ役の岡本健一やファントム役のアンサンブルキャストが入り混じり、まさにこれこそ『ロッキー〜』と言うべき世界観を見せつける。チャーミングなナレーター役の藤木孝に思わずニヤリとさせられ、さらにファントムの中にはROLLYの姿も! 古田いわく、「今回ROLLYは陰コーラスで頑張ってくれています。プロのミュージシャンなのに……(笑)。またそこかしこにファントムとしても出て来ますので、それもお楽しみに」
「タイム・ワープ」から、ついにフルターの登場ナンバー「スイート・トランスヴェスタイト」へ。10センチ近いヒールを履き、パワフルに歌い上げる古田の存在感は、圧巻の一言。怖いもの見たさに近い魅力のような……。本人にその原点を訊くと。「やっぱりティム・カリー(ピクチャー・ショー版の主演俳優)ですよね。すごくブサイクだし、気持ち悪いし(笑)、でもチャーミングっていう。その感じをうまく出せたらなと思います」
大の大人たちが、真剣に、そして壮大に作り上げる『ロッキー・ホラー・ショー』。観客も祭り気分で、大いに盛り上がりたい。
公演は12月9日(金)のKAAT 神奈川芸術劇場 ホールを皮切りに、福岡・大阪を回り、2月に東京にて上演。チケットは一部を除き発売中。なお、神奈川公演では限定日のみ終演後にトークショーを行う。また『ロッキー・ホラー・ショー』日本語版の初CD化が決定し、劇場にて先行発売する。
取材・文:野上瑠美子
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