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劇作家/演出家の倉持裕が率いるペンギンプルペイルパイルズ、その2年ぶりの公演『ベルが鳴る前に』の稽古がスタートした。客演の奥菜恵と、オーディションで選んだ11人を迎えて、「劇団初期の頃のような」(倉持)、SF色の濃いストーリーを展開するという。作品の仕上がりを探るため、稽古中の奥菜と倉持を直撃した。
穏やかに澄んだ水面を眺めていると、思いもよらない不穏な影が下から徐々に浮かび上がる。小さな笑いに身を委ねているうちに、いつのまにか見知らぬ場所まで運ばれていることに気づく。倉持が描くのは、そんな心地よい裏切りと高い物語性に満ちた舞台だ。「物語の主軸はシルミ(奥菜恵)と恋人アロイ(小林高鹿)の“個人の事情”。それは村などの大義名分をもつ“社会の事情”と対立するようでいて、実は個人を優先することが社会にもつながるという部分を描きたい」と倉持。物語はトラックに乗ってどこかへ急ぐアロイと、乗り合わせた別のムラに住むダスタ(玉置孝匡)のシーンを何度も挟みつつ、“機械”のある村の外れや地下何層もの巨大な研究施設、さらに異常な自然現象が発生している町の集会所と場所を移しながら、その全貌を露わにしてゆく。
この日に稽古していたのは、奥菜演じるシルミがアロイの作った"ある機械"を守って壁の前に立ちつくす場面。彼女の前には恋人の葬儀を始めようとする者や、無理やり“機械”を動かそうとする者など、次々にいわくありげな人々がやってくる。細かな間合いを何度も図って詰めてゆく倉持や、さまざまなやり方でスタッフまで笑いに誘うキャスト陣の中で、無造作なジャージ姿ながら強い光を放つ瞳の奥菜が印象的だ。彼女のきっぱりとした、同時に甘さを帯びた声で語られる言葉によって、物語はさらに謎を深めるようで……。
倉持の構想にまずあったのは“人と機械”。好きでよく読むというスチームパンクの色合いを備える本作で、「芯にはどうしても奥菜さんの存在感が必要だった。人間性と無機質さの両面があるのも魅力」と語る。対して、倉持とは昨年のリーディング公演『瓶詰の地獄』に続いてのタッグとなる奥菜は「作品のすべてを飲み込むのはまだ時間がかかりそう」と笑いながらも、「一つひとつのセリフが深い。どういう意味だろうと想いを巡らせながら楽しくやっています」と話す。ちなみに身体の一部が機械になっている女性が描かれたフライヤーは、人気漫画家の中村明日美子によるもの。「タイトルもあえてシンプルなものにした」(倉持)というその真意は、ぜひ劇場で確かめてほしい。
公演は、2月16日(木)から22日(水)まで東京・本多劇場にて上演。チケット発売中。
取材・文:佐藤さくら
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