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演 劇
1985年のデビュー以来、映画、ドラマと映像の世界で長く活躍を続けてきた仲村トオルだが、2004年に初舞台を経験。以来、本人曰く「舞台用の筋肉や脳みそを衰えさせないため、また舞台への恐怖心が芽生えないよう」毎年コンスタントに舞台に立つ。5月に開幕を控えた最新舞台『ハンドダウンキッチン』への心境を聞いた。
仲村が演じるのは、巷で話題のカリスマシェフ・七島。だが彼が考案したレシピといったものはほとんどなく、実は包丁もまともに握れない。いわば偽りのカリスマシェフだが、“大事なのは味や食材やシェフの腕ではなく、客をその気にさせること”という信念を持つ男だ。「最初にプロットを読んだとき、ものすごく僕ら俳優の仕事の本質や核心に通じる話だと思いました。本気で嘘をつくというところが、僕らの仕事に似ている」と言う仲村は、「彼を少し感じ良く、人当たり良くすると僕になる、ぐらいな感じの人のような気がしています(笑)」と、役に共感を寄せる。つまり本作の主眼は七島の嘘を追及することにはなく、“人は何によって満足や感動を得るのか?”という深遠なテーマに入り込む。「お客さんがどういう料理をどんなプロセスでどんな後味が残ったときに美味しいと感じるのか。全員が不味いと言う料理はありそうな気がしますけど、美味しい料理というのは人によって違うんじゃないか、違っていいんじゃないかって。僕らの仕事も、いい役者いい芝居って結局は観る人の好き嫌いじゃないだろうかと役者を始めた頃から感じてきたんです。好き嫌いというのは個人的な背景や記憶からできているものだろうし、そこにいい悪いなんてあるのかよ、と。だからシェフも俳優も、お客さんにいい夢を見せてあげられたら詐欺師と言われずに済む、そんな商売じゃないですかね(笑)」。
作・演出を手掛けるのは蓬莱竜太(モダンスイマーズ)。人生の機微を知る確かな筆致に定評ある若手劇作家だ。仲村のこれまでの舞台も、松尾スズキ、白井晃、岩松了、前川知大、ケラリーノ・サンドロヴィッチら作家性の高い演劇人との仕事が目立つが、本作でも「蓬莱竜太君という作・演出家の仕事であること」が出演の決め手となった。「そこ絶対触っちゃいけないのに!ってところに触る芝居を書く人だと僕は感じました。神経に障るというよりは、直接脳みそを触れられたような。演じる側として、胸を打つではなく心臓を握る、みたいなところまで行ってみたいなあと思ったんです」。
仲村&蓬莱の到達点に、今から期待が高まる。
取材・文:武田吏都
公演は5月12日(土)から6月3日(日)まで東京・PARCO劇場にて開催。チケットは3月25日(日)から一般発売する。なおチケットぴあでは3月22日(木)18:00までWEBで先行販売を実施。
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