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以前、カーテンコールについて「拍手の中で幕が開く前、出演者のみんなと手をつなぎながら“さぁ、お客さまに愛をお分けしましょう”と言っているんです」と話してくれたことがある。その意識は今も同じ。作品を選ぶ時点から“愛”が最も大切なテーマだという美輪明宏に、開幕を控えた『椿姫』についてインタビューした。
「私が上演する作品はどれも“無償の愛”が描かれています。『黒蜥蜴』にしても『毛皮のマリー』にしてもそう。舞台を通して、見返りを求めない一途な愛を伝えたいのです。それが、今の世の中にとってとても必要なことだから」。
『美輪明宏版 椿姫』は8年ぶりの再演となる。「新しい作品も探してはいるのですが、描かれている愛の大きさ、作品の深みを考えると、なかなか“これ”というものに巡り合えません。でも、いい作品は何べん繰り返してもいい。それどころか、上演すればするほど磨かれるんです。日本はなぜか新作をありがたがる風潮がありますが、本当に再演がだめならシェイクスピアの戯曲や能、狂言、歌舞伎はどうなるの? それに前回が8年前ですから、ご覧になっていない方も多いと思うんですよ。私の舞台に来てくださるのは、実は若い方が多いので、きっと新鮮に感じていただけるはず」。
19世紀、フランスの作家デュマの実体験をもとに書かれた『椿姫』は、パリの裏社交界という特殊な世界を題材に採りながら、オペラや映画化もされ、幾度となく舞台化されてきた恋愛小説。多くのパトロンを持つ高級娼婦マルグリットが、若く純朴な青年アルマンと出会い、何もかも捨てて愛に生きようとするも、彼のために身を引くというストーリーだ。
「最初に『椿姫』上演を松竹に頼まれ(1968年)、三島(由紀夫)さんに脚本を依頼した時“君みたいな太々しい人に肺病で死ぬ役なんて似合わないよ”と断られたの(笑)。でも、いざ上演したら多くの方に“『椿姫』が単なるメロドラマにならず、これほど感動するとは等々”と言っていただけました」。
今回も、「美輪版」と付いているだけあって、ストーリーの細かい部分を補強。と同時に、膨大な知識と審美眼をもとに、美輪自身が演出、美術、衣裳、音楽も担当、原作の時代や世界観を一層強く感じられる仕様に仕立てられている。
「視覚でも聴覚でも、作品の世界を感じていただきたい。実は嗅覚にもこだわって、プロデューサーにお願いして開演前の客席に、伽羅系のお香を炊いていただいているんですよ」。
五感すべてで“美輪さまの愛”を感じられそうだ。
取材・文:徳永京子
美輪明宏版『椿姫』は4月4日(水)から5月6日(日)まで、東京・ル テアトル銀座 by PARCOにて開催。その後、全国8か所を回る。チケットは発売中。
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