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ザ・ブルーハーツの楽曲を全編に散りばめた音楽劇『リンダ リンダ』が、6月20日、東京・紀伊國屋サザンシアターにて開幕した。本作は劇作・演出を手がける鴻上尚史のユニット「KOKAMI@network」の第11弾にして、8年ぶりの再演でもある。
物語で描かれるのは、アマチュア・バンドの「クール・パルチザン」。彼らは、大手レコード会社のスカウトマンを前に、気合い十分のライブを披露する。だが、結局はメインボーカルだけが引き抜かれ、ドラムのゴンパチは福島の実家へと帰ってしまう。残されたリーダーのケン、ベースのマサオ、マネージャーのミキは意気消沈。だがゴンパチからの電話で、ケンは、ある無謀な計画を思いつく。
この舞台はバンドものではあるが、若者たちがひたむきに夢を追うような青春物語ではない。ケンとマサオは四捨五入すれば40歳。夢を夢見る時代はとっくに過ぎ去り、リアルな現実に直面せざるを得ない状況にある。そう、青い春と言うには年齢を重ね過ぎているのだ。だがそれでもロックへの夢を諦めきれず、彼らはあがき続けることをやめない。
そんな彼らの心情は、そのままザ・ブルーハーツの楽曲として歌い上げられていく。耳馴染みのいいメロディラインは言うまでもないが、歌詞の一つひとつに、実直さと、繊細さと、胸を突くような熱さが感じられて、印象深い。しかも、楽曲が、まるでこの舞台のために作られたかのように、何の違和感もなく物語に溶け込んでいる。ザ・ブルーハーツに対する鴻上の思いは、それほどまでに深く、強いのだろう。
マサオ役の松岡は、8年前の初演が初舞台。その後も重ねてきた舞台経験が、確実に今回の再演に生かされている。そしてSOPHIAでは決して聴けない、マサオとしての松岡の歌声。特に後半のソロパートは圧巻だ。鴻上に負けず劣らずザ・ブルーハーツの大ファンだと言うのが、ケン役の伊礼。その情熱は役にも反映され、まるで彼自身が、みんなを計画へと巻き込んでいく熱源のよう。感情の起伏の激しさがかわいくもコミカルでもあるのは、星野真里。大高洋夫、高橋由美子は、ベテランとしての安定感を見せる。一方、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎は力の入った演技がキャラクターと合致し、笑いへ転化させることに成功していた。
東京公演は7月22日(日)まで。その後、大阪・森ノ宮ピロティホール、福岡・ももちパレス 大ホールにて上演される。
取材・文:野上瑠美子
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