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さらに人気が拡大! 『スリル・ミー』はなぜウケるのか?
2012年07月10日 10時00分 [ミュージカル・ショー]
ミュージカル『スリル・ミー』稽古風景 左から良知真次、小西遼生
ミュージカル『スリル・ミー』稽古風景 左から良知真次、小西遼生

ふたりの俳優と1台のピアノだけで展開するミュージカル『スリル・ミー』が、東京・天王洲 銀河劇場で7月15日(日)に開幕する。昨年9月の日本初演、今年3月の追加公演を経て、興行規模は拡大し、キャストも2組から4組に増えた。同じ芝居が1年以内に3度上演されるのは、異例のケースといって間違いない。躍進の理由はどこにあるのか、稽古場で探った。

ミュージカル『スリル・ミー』公演情報

登場人物である「私」と「彼」は、19歳の法科大学院生。「彼」は、ニーチェの“超人”思想に傾倒しており、世間に対する優越感を得たいがために、完全犯罪を目論む。一方、道連れに選ばれた「私」は、「彼」に対する同性愛的愛情から、それを拒むことができない。放火遊びに始まった犯罪はエスカレートし、ついには誘拐殺人にまで発展してしまう。

この日の稽古では、「私」を良知真次、「彼」を小西遼生が演じていた。オーディションで選ばれた初参加ペアながら、演出の栗山民也ら2度の上演を経験してきた頼もしいスタッフ陣に囲まれているせいか、ふたりとも落ち着きのある演技をみせ、表現に迷いを感じさせない。良知は、話し方と姿勢だけで54歳と19歳を巧みに演じ分けるなど、丁寧な表現が光り、小西は、冷徹な人物像を自分のものとして、異常な言動にリアリティを与えている。

階段を中央に配しただけのシンプルな舞台美術。そこで様々に動き回るふたりの位置関係が、「私」と「彼」の心の距離を示すようで面白い。特筆したいのは、視線の一つひとつが生む劇的効果だ。たとえば、なかなか目を合わせないふたりが初めて真正面から見つめ合う瞬間は、キスシーン以上に衝撃的だった。

1924年にアメリカで実際に起きた誘拐殺人事件をベースにして、2005年にNYのオフ・ブロードウェイで初演。その後、世界各国に上演地を広げ、今やその数60都市におよぶ。描かれている事件が特異でありながら、作品が広く受け入れられているのは、「私」の心情に共感しやすいからだろう。愛するより愛されたい。相手の心をつかみたい。それは誰にとっても当たり前の感情だ。また、誰かと秘密を共有したことのある人なら、その絆が生む甘美さを思い出すに違いない。

良知×小西組のほか、田代万里生×新納慎也、松下洸平×柿澤勇人の初演キャスト2組が登場し、韓国版を200回以上演じてきたチェ・ジェウン×キム・ムヨルが日本初登場を果たす。7月15日(日)から29日(日)まで天王洲 銀河劇場、8月8日(水)に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。

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