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イギリス人作家フィリップ・リドリーによって書かれた舞台『クリンドル・クラックス!』、その翻訳上演が7月28日(土)から東京・世田谷パブリックシアターにて行われる。画家として活躍する一方、『柔らかい殻』『聖なる狂気』などの映画を監督し、演劇作品『ピッチフォーク・ディズニー』『宇宙でいちばん速い時計』『ガラスの葉』が日本でも上演されてきたリドリーだが、この作品は他と異なるテイストらしい。手がかりを得るために稽古場を訪ねた。
主人公の気弱な少年ラスキンが、様々な困難に打ち勝ち、真の“勇者”へと成長する姿が描かれる。人間のダークサイドを暴き出すのが得意な作者にしては、意外なほど純真なストーリーといっていい。おまけに、魔獣ドラゴンとの決闘、というファンタジックな展開も用意されている。聞けばリドリーは「子どもの本を書くことがすべての仕事の源」というほど児童向けの作品に力を入れており、本作も最初は童話として発表されたという。
「僕も最初は童話で読みました」と話すのは、演出の陰山恭行だ。「でも、戯曲があると知って自分で訳して読んでみたら、実は大人向きなんだな、ということがわかった。たとえば、ウィリアム・ブレイク(約200年前に活躍したイギリスの画家/詩人)に対するリスペクトが全編に感じられる。“太陽だって、月だって、自分を疑えば輝けない”というブレイクの詩の一節が物語のモチーフになっているんです」。
17歳の阿久津愼太郎から85歳の西本裕行まで、キャストの年齢層が幅広い。稽古していたのは、ラスキン(阿久津)が「学芸会で主人公を演じたい」と両親(酒井敏也、宮地雅子)に切り出すも、「お前には無理」と諭されるシーンだ。主役の最有力候補であるエルビス(伊阪達也)は、体も声も大きいガキ大将。そんなエルビスの存在、そして町を襲う魔獣ドラゴンの気配が、ラスキンには脅威だ。圧倒的な強敵に対して、弱者はどう立ち向かうべきか。陰山は言う。「いじめの問題にもつながるテーマです。リドリーが伝えたいのは、“負けるときもある。ただ想像力だけは忘れずに生きていこう”ということ。結局ドラゴンを倒すのも、武器ではなく想像力なんですよね」。
様々な陣形を組みながら魔物を表現したり、ROLLYがギターの生演奏を披露したり。多彩な趣向は目にも耳にも楽しいが、想像力をフルに使って観れば、その楽しさがさらに膨らむに違いない。
石井光三オフィスプロデュース『クリンドルクラックス!』は、7月28日(土)から8月5日(日)まで世田谷パブリックシアター、8月8日(水)に愛知・名鉄ホール、8月11日(土)に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
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