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演劇集団キャラメルボックスの劇団公演として、真柴あずきが初めて単独で脚本・演出を手がける『彼の背中の小さな翼』が、5月21日、東京・サンシャイン劇場で開幕。“アコースティックシアター”と銘打った本作は、真柴の世界観を強く打ち出したシリーズで、劇団代表の成井豊の作品とは、またひと味違った劇空間を体験することができる。
演劇集団キャラメルボックス『彼の背中の小さな翼』チケット情報
25年間音信不通だった父・颯介が亡くなり、姪の理衣と共に、颯介が生前暮らしていたという勝浦にやって来たかさね。画家だった父が、住居兼アトリエとして借りていたその家には、彼の作品が大量に残されていた。早速それらの整理に取りかかろうとしたかさね、理衣の前に、父の思いがけない忘れ物が現れる。それは父の友人で、同居人でもあるという18歳の優太。そんな優太が描いた絵に、イラストレーターのかさねは並々ならぬ才能を感じて……。
キャラメルボックスには珍しい、5人という少人数芝居。しかも劇団員は坂口理恵と岡田達也のみで、俳優集団「D2」の上鶴徹、清水由紀、劇団「青年座」の大家仁志が客演という、これまたなかなかない組み合わせが実現した。そんな演出家、役者たちの手作り感が伝わる舞台は、“アコースティックシアター”というシリーズ名が非常にしっくりくる。
共に劇団の看板でもある坂口と岡田は、さすがの安定感。特に等身大でかさねを演じた坂口がいい。かさねがどう仕事と対峙し、どう自らの歩む道を決めてきたのか。その姿に、自身を投影する観客も多いだろう。また上鶴演じる優太は、天賦の才を持ちながら、それが罪でもあるかのように自らの才能に背を向けてしまう青年。そんな繊細さと危うさ、そして優しさをあわせ持った優太を、上鶴は丁寧なアプローチで体現してみせる。さらに天真爛漫な理衣役を清水が好演し、しっかりと大家が脇を固める。
世の中に天才と呼ばれるほど才能に恵まれた人は、ほんのわずかしかいない。そしてそういった天才に比べて、どうしようもなく凡庸な自分に、嫌気がさす時もあるかもしれない。しかしそこで自らの夢のつぼみを摘み取るのではなく、どう違う花を咲かせられるかを考える。本作は、そんな一歩を踏み出そうとする人々への、心温まるエールのように感じられた。
なお同劇場では、同じくキャラメルボックスの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾原作)を上演中。1日で両作品観ることも可能なので、2本のキャラメルボックスを見比べてみるのもまた楽しいだろう。
取材・文:野上瑠美子
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