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清朝の王女に生まれながら、日本人の養女となり、最期はスパイとして処刑された川島芳子。そんな彼女の波乱万丈な人生を、水川あさみ主演で描く舞台『「激動−GEKIDO−」川島芳子の物語』が、8月23日、東京・新国立劇場(中)で幕を開ける。それに先駆け行われた、公開稽古を見学した。
この日の稽古は、芳子がスパイ活動を始めるきっかけとなった、軍人の田中隆吉と出会う重要なシーンから。芳子と言えば“男装の麗人”と言われるほど勇ましく、男勝りなカッコいいイメージがある。しかし稽古前の水川は、共演者と会話を弾ませ、笑顔が絶えない。そこに一抹の不安を感じたが、稽古開始とともにその屈託のない笑顔は妖しい微笑みへと変わり、凛とした佇まいは芳子のイメージそのものであった。
そこに登場するのは、田中演じる松尾貴史。クレバーな策士といった役どころがぴったりである。また動きやセリフの端々に松尾らしいアドリブをきかせ、その度に演出のダニエル・ゴールドスタインは、満足気な笑みを浮かべていた。
しかしその松尾の存在が笑いのツボとなってしまったのが、松尾との絡みも多い水川。「私ゲラ(=笑い上戸)なんです」との言葉通り、松尾を見て吹き出してしまうこともしばしば。ゴールドスタインからは、「あさみさん、松尾さんの顔を見ないでください」と冗談まじりのアドバイスも。すると稽古場は一気に笑いで包まれ、役者たちの無駄な力がスッと抜けていくような感覚があった。
芳子の父・川島浪速を演じるのは、別所哲也。年老いてはいるものの決して威厳の衰えない浪速が、まさにそこにいた。その圧倒的な別所の存在感に、今度は稽古場にいい意味での緊張感が走る。また芳子の執事・緒方圭一郎を演じるのは桐山漣。芳子への忠誠心、そして許されざる愛を感じさせる繊細な演技が、強く印象に残った。
稽古終わりには、水川、別所、松尾、ゴールドスタインによる囲み取材も。稽古の感触を尋ねると、「見ての通り賑やかに、楽しく進んでいます(笑)」と水川。すると別所は「作品は深刻でドラマチックですが、現場は水川さんを中心に明るくて。あと松尾さんも!」と言うと、すかさず松尾が「別に笑わせてるつもりはないんですけどね(笑)」とひと言。それを聞いていたゴールドスタインは「この進行からも分かるように、お三方は非常に遊び心がある。そしてそれが役者にとって一番重要なことだと思います」と語り、この役者陣への信頼が作品成功へのカギを握っているように思われた。
舞台『「激動−GEKIDO−」川島芳子の物語』は8月23日(金)から9月2日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演。チケット発売中。
取材・文:野上瑠美子
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