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激しい銃撃戦を交えた大胆なストーリー展開、謎めいた人間関係、欲望と人情が交錯する濃密な心理描写……。岩松了が作・演出をつとめ、娯楽性と文学性を兼ね備えた新感覚の任侠劇として人気を博した『シダの群れ』シリーズ。その最新作『シダの群れ 第三弾 港の女歌手編』が、この秋、東京・Bunkamuraシアターコクーンに登場する。
「『ゴッドファーザー』シリーズの主人公、マイケルが成長してドンになっていく。その演劇版を作りたいと思ったんです」と、岩松は自らの緻密な心理劇とヤクザものとの出合いを語る。
「僕の中にはヤクザ気質はないし、そういう友だちもいない。だから単なる憧れのような距離感しかないけど、そこにはやはり学びたいものがあって。人は日常生活を送る上で、できるだけ問題を起こさないようにするでしょ。その知恵が結局は鬱屈になり、問題が積み重なっていく。でも、ヤクザの世界はもっとストレートで“隠さない”。やられたらやり返さなきゃダメだ!というような。僕はずっと日常生活やその裏にあるジュクジュクした感情を描いてきたけど、彼らの世界を通して、その緻密さを壊し、もっと省略し、飛躍する“めざましさ”を、自分の劇作に取り入れられるかもしれないと思っているんです」
組の跡目争いに端を発する粛正(第一弾)、師弟関係の中に生まれる殺意(第二弾)に続き、第三弾で描かれるのは女の夢を弄ぶ男たちの姿。第一弾で組の重鎮・水野を撃ち、逃走した森本(阿部サダヲ)は、とある港町で歌手・ジーナ(小泉今日子)と出会う。「私はこんな港町の歌手で終わるつもりはない」。現実と乖離した彼女の夢や思い出を都筑組の幹部・結城(小林薫)をはじめとする周囲の男たちは、自らの欲望のために利用しようとするのだが……。
「影も形もない“夢”や“理想”を、男たちの現実の中に放り込んでみたかったんです。女歌手という設定はもう、キョンキョンありきで書きました。電話して『歌手の役なんだけど、舞台で歌ってもらっていい?』って聞いたら、『いいけど私、上手くないよ』って(笑)。阿部くんは第一弾では『俺はヤクザになれない』っていうような下っ端のポジションで、いわば客観的な役だったんです。それが次第に積極的に抗争にも関わるようになり、周りと自分の違いはなんなのかを考え、自分なりのヤクザになっていく。どういう思想を持って彼はそこに至るのか。それは僕自身がヤクザというものにどういう思いを抱いているのかを明らかにしていくことにもなる気がします」
公演は11月6日(水)から11月30日(土)まで東京・シアターコクーン、12月6日(金)から12月15日(日)まで大阪・シアターBRAVA!、12月21日(土)から12月23日(月・祝)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールにて。
取材・文:鈴木理映子
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