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サム・シェパードの傑作戯曲『TRUE WEST〜本物の西部〜』が、9月29日、東京・世田谷パブリックシアターで開幕。『アベニューQ』などを手がける「The New Group」の芸術監督で、ブロードウェイでも活躍するスコット・エリオットが演出を担う。
南カリフォルニアのロサンゼルス郊外にある一軒家。母から留守番を頼まれたオースティンは、プロデューサーのソール・キマーに売り込もうと映画の脚本を執筆している。そんなオースティンの前に、5年ぶりに現れた兄のリー。コソ泥を繰り返し、芸術とは無縁な生活を送っていたリーだが、オースティンとの打ち合わせにやって来たキマーに対し、突如「いい西部劇のストーリーがある」と切り出して……。
作品の大半を占めるのは、内野聖陽演じるリーと音尾琢真演じるオースティン、兄弟ふたりの会話である。ほぼそれだけで2時間見せ切ってしまうのは、ひとつに自身の体験も反映された、サム・シェパード戯曲の巧みさにあると言える。兄弟が発する言葉は、相手に対する嫉妬、羨望、畏怖、さらには父への異なる感情をも内包し、お互いの触れられたくない胸の内にズドンと突き刺さる。それでいて第三者である観客から見れば、そんなふたりのやり取りは何とも滑稽に映り、つい吹き出してしまうような、笑えるシーンも多い。
そしてこの戯曲を成立させる上で、やはり大きな比重を占めているのは俳優の技量だろう。というのも演劇である以上、舞台上で起こることは作り物に違いない。しかしその作り物が他愛ない兄弟ゲンカだからこそ、少しでもそこに違和感があれば、観客は一気に現実へと引き戻されてしまう。しかし舞台上にいる内野は確かにならず者のリーであり、音尾は堅実な脚本家のオースティンである。そんなふたりの会話は、すべてがリアル。ひと言ひと言がその場で立ち上がり、次に何が起こるか分からない。それゆえ観客は、自然とこのふたりの世界に釘づけになってしまうのである。
そんな兄弟の緊迫したやり取りを繋ぐのが、菅原大吉演じるソール・キマー。飄々とした受け答えと何とも言えない胡散臭さが、作品のブレイク的な存在であり、彼らの立場を逆転させるキーパーソンでもある。吉村実子演じる母さんは、物語終盤に登場。久々に再会した息子たちを前に、彼女が取る行動は、さまざまな可能性を示唆する。
巧者な俳優たちが体当たりで挑む、“本物”の会話劇。観た者の心をシビレさせる、圧巻の劇空間がここにはある。10月13日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて。その後、10月17日(木)から20日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演するほか、全国を巡演。
取材・文:野上瑠美子
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