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森田剛が放つ悪のエネルギーに圧倒!『鉈切り丸』大阪公演をレポート
2013年10月25日 15時30分 [演劇]
いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」〜W・シェイクスピア〈リチャード三世〉より
撮影:阿部章仁

いのうえひでのり演出、青木豪脚本、森田剛主演で贈る『鉈切り丸』が10月12日、大阪・オリックス劇場で幕を開けた。シェイクスピアの『リチャード三世』を鎌倉時代に置き換え、天下を獲るために悪の限りを尽くす源範頼の生き様が描かれている。

いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」〜W・シェイクスピア〈リチャード三世〉より チケット情報

戦乱絶えない平安末期。顔にアザ、背中にこぶ、片足を引きずり歩くひとりの男がいた。その名は源範頼、幼名を鉈切り丸(森田)という。容姿は醜いが頭脳明晰で口が立つ範頼は、人並み以上の野望を抱き、天下を獲ろうと舌先三寸で巧妙に策略を仕掛けていく……。

愛を知らずに生まれた孤独感、そして醜い容姿による強い劣等感からくるものなのか、その悪のエネルギーは半端じゃない。野心に満ちた目を光らせ、会話には少しの感情もこもらない。自分の手を汚さずして、弟・義経(須賀健太)、兄・頼朝(生瀬勝久)を死に追いやる範頼。知略を尽くして徐々に駒を進めていくその様は、時には目を背けたくなるほどに残忍非道だが、ある種の痛快さをも感じさせる。将軍へと昇りつめた後、急展開で落ちていく哀れな様も見ごたえたっぷりだ。

範頼を演じる森田は、将軍へと近づくにつれてどんどん輝きを増し、鋭い眼光を放ちながら吐くキメ台詞にもゾクッとさせられる。さらには憎しみがこもったキレ味鋭い立ち回りを魅せ、強くも哀しく、そして脆い“ダークヒーロー”を見事に演じきっている。また、意外にもいのうえ演出は初となる生瀬はコミカルに頼朝を演じ、張り詰めた空気の中に柔らかさをもたらす。その家臣・大江広元役の山内圭哉と見せる抜群のコンビネーションも必見。柔と剛の絶妙なバランスが観る者の心を揺さぶっていく。

さらに、渡辺いっけい、若村麻由美、麻実れい、秋山菜津子など、豪華ベテラン俳優陣がどっしりとした演技で物語に厚みを持たせる。一方、若手の活躍ぶりも見もので、義経役の須賀や家臣・和田義盛役の木村了がフレッシュな演技と俊敏な立ち回りで魅せ、成海璃子は、範頼に夫を殺された巴御前を丁寧な演技で魅せていく。

公演前には森田が「僕が演じる源範頼はとても悪い男ですが、この舞台は衣装もキレイで派手、セットも豪華で立ち回りもありますし、たくさんの方々に楽しんで頂けると思います」と魅力を語り、生瀬も「この舞台を観れば人生が変わると言ってもいいくらい。特に若い人たちに観てほしい」と語った。また、初舞台の成海も「巴御前は夫を殺した範頼を復讐しようとするとても強い女性。初舞台を楽しみたいと思います」と意気込んだ。

公演は10月26日(土)まで大阪・オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)、11月8日(金)から30日(土)まで東京・東急シアターオーブにて。チケット発売中。

取材・文:黒石悦子

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