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とある質屋に集まった男たちを描く密室群像劇『俺たちの明日』。4月公開の映画に先がけ、舞台版が1月10日(金)に東京・紀伊國屋ホールで開幕した。舞台初主演の古川雄輝をはじめとする若手キャストを、ベテランの野村宏伸らが引き締める布陣だ。
ラストを思わせるリュウ(古川)のモノローグを経て、物語は時系列の冒頭へと一気に巻き戻される。闇取引も行うワケありの質屋に、名うての窃盗団であるリュウ・タカシ(広瀬友祐)・トシ(谷内伸也)が易々と潜入。狙うのは地下倉庫にある特殊金庫に隠されたお宝≠セ。そこへ予定外の男たちが次々に現れる。その中には、リュウを執念深く追っていた刑事・君島(野村)もいて……。
舞台上には、倉庫を思わせるコンクリート打ちっぱなしの柱と壁。壁の向こうにある階段は階上の店舗へと繋がり、物語の全てはこの空間のみで展開する。後半、密室で次第に追い詰められていく男たちのヒリヒリとした緊迫感や息苦しさが、視覚的にもよく表現されている。
窃盗団のリーダー・リュウ役の古川は、チームを束ね導く冷静さと、ギリギリの状況下でも病気の妹や仲間を気遣う優しさ、タフネスさを的確に表現する。激しいアクションシーンにおいても、最小限の動きで最大限の効果を発揮するといった、リュウらしいクレバーさを感じさせるものだった。一方リュウを「アニキ」と呼んで慕うタカシ役の広瀬は、熱いキャラクターと激しいアクションを披露。ファッションも含め、カラーの違うふたりの最強コンビぶりを彷彿とさせた。
演出も兼ねる岡本貴也の脚本は、窃盗団の3人や君島刑事はもちろん、質屋のアルバイト店員(廣瀬智紀)や清掃員(友常勇気)、客としてやって来たチンピラ(神永圭佑)に、裏の顔を持つ質屋の店長(橘輝)などら、図らずも事件に巻き込まれてしまう男たちの心情も丁寧に描く。それぞれ大切に思う人がいて、叶えたい夢がある。ひたすらに男臭い物語の中で、女性の存在を感じさせ、ホッとするくだりだ。
ストーリーが二転・三転するうちに極限状態に陥る8人の姿は、物語の設定を超えて、どこかの戦場の兵士のようにも思えて来た。覚悟を決めたリュウを筆頭に、持てる全てを尽くして運命と立ち向かう男たちをハラハラしながら見届けるうちに、幕が下りる。正しくあっという間の100分だった。
公演は1月19日(日)まで行われる。平日公演ではアフタートークショーを実施。チケットは発売中。
取材・文:山上裕子
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