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串田和美の代表作にして、『上海バンスキング』より前に劇団が初めて取り組んだ本格的な音楽劇『もっと泣いてよフラッパー』が、22年ぶりに上演。明日2月8日、東京・シアターコクーンで開幕する。そこで初日まで約1週間と迫った1月下旬、都内某所にある稽古場を訪れた。
稽古場に入ってまず驚かされたのは、そこにいる人数の多さ。キャスト、バンドメンバーだけでも30人を越え、スタッフを含めるとその倍にはなる。聞こえてくるのは、話し声、笑い声、楽器の奏でる音……。これだけの人数がワイワイガヤガヤと入り混じるさまは、雑多なこの作品世界そのもののようだ。
本作の舞台は1920年代の空想のシカゴ。酒場のホールにフラッパーやギャングたちが集うシーンから、この日の稽古はスタートする。皆が飲み、歌い、踊る、まるで夢のような陽気なシーン。松たか子や松尾スズキ、石丸幹二を始めとする俳優陣が、まずはそれぞれ好きなように動いて見せる。だが早々に串田がストップ。皆の輪の中心に入り、「無表情にならないように、もっと遊んでるって感じが欲しい」と指示を出す。その言葉を受け、俳優陣からは次々とユニークなアイデアが。中でも大森博史や片岡正二郎ら、かつて串田が率いた「オンシアター自由劇場」のメンバーが場を引っ張っていく。
その成果もあり、シーンはグッと面白味を増したが、まだ串田は納得がいかない。「もう少し動きは抑えるんだけど、より賑やかな、騒いでいる感じが欲しい」という難しいオーダーに、俳優たちの顔に一瞬戸惑いの色が浮かぶ。特に若手は、ベテランが多いということもあり、自分の意見をうまく出し切れていない様子。すると串田はスッと彼ら彼女らの側に近寄り、「ほら、あの時みたいな感じでやってみてよ」と笑顔でその背中を押す。そこには若手もベテランもない、カンパニーとしての一体感を目指す串田の思いが滲んでいた。
『〜フラッパー』の上演は今回で6度目となるだけに、串田は「まだ(動きが)面白くない」と、さらなる深みを追い求める。そこで急遽実施されることになったのが、このシーン用の動きのオーディション。何度も爆笑が起こる中、3パターンの動きが勝ち残り採用されることに。それは稽古序盤では想像もつかなかったような、斬新な動き。こうした積み重ねが、串田作品に瑞々しさを与えているのだろう。
串田和美と豪華キャストが生み出す、怪しく、幻想的な音楽劇。傑作と言われるゆえんを、この稽古場で垣間見た気がした。
公演は2月8日(土)から3月2日(日)まで東京・シアターコクーン、3月7日(金)から9日(日)まで長野・まつもと市民芸術館 主ホール、3月14日(金)から16日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて。チケット発売中。
取材・文:野上瑠美子
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