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注目を集めた『犬は鎖につなぐべからず』から7年。日本現代演劇の祖ともいえる岸田國士の名作をコラージュした作品に、ナイロン100℃が再び挑む。今度の『パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』では、岸田戯曲をどんなふうに再構築していくのか。潤色・構成・演出を手がけるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)に思いを聞いた。
ナイロン100℃『パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』チケット情報
KERAが再び岸田國士コレクションの続編に挑戦しようと思ったのは、いちばんには、これが青山円形劇場で上演されるということがあったらしい。「円形劇場はほぼ全方位に観客の視線がある特殊な空間。あの場所だからこそできるパノラミックな演出が効果的な演目って何だろうと考えたときに、7年前の前作が思い浮かんだんです。客席を含むすべてを演劇空間にできるスペシャルな劇場で、和装姿の人たちが、踊り、岸田國士の台詞をしゃべる。非常に新鮮な体験でしたから」。しかも、再び挑もうと決めた後、青山円形劇場の閉館予定が発表された。「ここではほかの劇場ではやれないことができるという意味においても、青山円形劇場でやる最後のナイロンをぜひ観ていただきたいなと思ってるんですよね」。
短編8作を再構築した前作と同様に、今回も、表題作の『パン屋文六の思案』や、その続きの『遂に「知らん」文六』『かんしゃく玉』『恋愛恐怖病』など、8〜9編の戯曲が大胆につなぎ合わされていく。また前作に引き続き、衣装監修をモダン着物の豆千代が、振付を脱力系ダンスの井出茂太が担当。「前回よりさらにアバンギャルドになると思います(笑)」とKERAも宣言するが、その洒脱さは大いに期待したいところだ。さらに、観客全員にニオイカードを配布して、「視覚、聴覚だけじゃなく、嗅覚でも楽しんでもらう」という試みも。そうした演出プランに、岸田國士と聞いたときの堅苦しさはまったくない。「チェーホフでもカフカでも、『それ昔の人でしょ。面白いの?』って、お客さんが及び腰になるような人が僕は大好きなんですが(笑)、岸田國士も観てもらえれば本当に面白いんです。素材はメロドラマみたいだけど、そこに溺れず、非常にシニカルな目線で書いている。そのドライさがすごくモダンで、大正時代の終わりにこんなものを書けるというのはよほど異端だったんだと思います。といっても、その面白さに気づいたのは、僕も前作の稽古が始まってからだったので申し訳ありませんでしたっていう感じなんですけど(笑)。だから今回は、最初から心して岸田戯曲に取り組ませていただくつもりです」。
公演は4月10日(木)から5月3日(土・祝)まで青山円形劇場にて。チケット発売中。
取材・文:大内弓子
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