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鴻上尚史が若手俳優を集めて虚構の劇団を旗揚げしたのが2008年。記念すべき第10回公演に選んだのは、読売文学賞戯曲・シナリオ賞も受賞した旗揚げ公演「グローブ・ジャングル」の再演。いまこの芝居を再び上演することについて、鴻上に訊いた。
「虚構の劇団は去年、『エゴ・サーチ』(初演2010年)という作品で初めて再演を経験したんです。そのときに劇団員がすごく変わっていたのを目の当たりにして、『なんだ、成長してんじゃん』と感じた(笑)。だったらこんどは旗揚げ公演をやってみたら、もっと成長ぶりがわかるんじゃないかと」 何かを求め、ロンドンにやってきた日本人の集まるコミュニティが舞台。せっかく海外にいるのにも関わらず、日本のインターネットの世界にとらわれる人々――。「さみしさや切なさと同時に、日本って、日本人ってなんだろう? という思いも含め、僕自身がロンドンで生活したなかで考えたことをすべてぶち込んだ作品です」と鴻上が語るこの物語は、初演から6年経ち、さらに現実に寄り添ってきたようにも見える。「ネットで人生を狂わせるという話が、6年前は特殊な例だった。でも、最近は簡単に学生が退学になったり、企業が損害賠償を請求されたり……ずいぶんカジュアルになったような気がします。息苦しさが増している。それは誰かが仕掛けたわけじゃなく実はみんなが、息苦しくしているように思えるんですよ」。
今回は新たにオレノグラフィティ(劇団鹿殺し)、根本宗子というふたりの俊英が客演として加わる。「小劇場界からスターが生まれてほしいんですよね。オレノグラフィティは、そうなれる人だと思う。根本は去年初めて彼女の作品を観たけれど、23歳でよくまあこんな作品をつくれるなと思った。最近少ない、正しい野望を持った若者なんです」。そう話す鴻上自身が野望のもと、かつて第三舞台を率いて小劇場ブームを巻き起こし、そして再び虚構の劇団で演劇界に爪痕を残さんとしている。「虚構の劇団って、鴻上の作品世界を体現する手足では決してないんです。僕が提出する作品世界に対して20代〜30代前半の役者たちががっぷり組んで、受け入れて、打ち返してくる。対等な立場で戦っている。その打ち返す力の強さを見に来てもらいたいと思います」。
公演は4月4日(金)から13日(日)まで東京・座・高円寺、4月17日(木)から20日(日)まで大阪・一心寺シアター倶楽にて。チケット発売中。
取材・文:釣木文恵
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