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決してマイルドとは言いがたい、いやむしろダークすぎて笑うほかはない作風でむき出しの人間性を追求する英国の人気劇作家、マーティン・マクドナー。自身のルーツであるアイルランドのさびれた村を舞台にした『ロンサム・ウェスト』は、27歳で発表した初期代表作だ。日本でも幾度か上演されてきたが、昨年マクドナー作『ピローマン』を手がけた小川絵梨子の翻訳・演出により、堤真一がマクドナー作品に初挑戦する。
昨年は3本の舞台に主演した堤。任侠の世界に生きる義理堅い男(『今ひとたびの修羅』)、マザコンのクローン人間(『断色』)、欲をかいて自滅する愛妻家(『マクベス』)と三者三様の人物像を演じたが、今回扮するのは救いがたくキレやすい男だ。仲が悪すぎる弟(瑛太)とは些細なことで罵り合い、挑発し合う。「ものすごく狭い世界で生きているメチャクチャな兄弟の話です。ワークショップでホン読みをした時には、笑っちゃいましたね。コイツら結局、こうやって生きていくしかないんだな、って」。兄弟を更生させようとするアル中の神父(北村有起哉)の奮闘も空回り。ダメ男どもを尻目に、この家に出入りするしっかり者の少女(木下あかり)だけが唯一の希望だ。「やっぱり男のほうがダメなんですよね。自分のテリトリーを作ったら、そこから出られない。本当の意味で冒険できるのは女の人じゃないかな。この兄弟はお互いに依存度が高くて、今の環境から逃れようという気もないんです。彼らを強い絆で結ばれていると見るか、すごく惨めな兄弟と見るか。人によって捉え方もまったく違う気がする。特に女性がどう感じるのか、興味深いですね」。
演出の小川との共同作業は『トップドッグ/アンダードッグ』(2012年)で経験済み。“共依存する兄弟の物語”という点では今回と共通項も多い。登場人物の心の動き、言葉の裏にあるものを丁寧に探っていく小川のスタイルは、堤自身の芝居に対する向き合い方とも一致している。「小川さんは想像力を広げて“根っこ”を作る作業を大切にする演出家です。俳優にとっても、大事なのは解釈ではなく想像力じゃないかな、と。どんなに想像力を働かせてもひとりの人間を理解することなんて不可能だけど、愛情と想像力と客観性を持って役に向き合えば、見えて来るものはあると思う」。だからこそ、演出家と俳優がそれぞれの想像力をぶつけ合う稽古場は、堤にとって芝居づくりの面白さが詰まっている。「瑛太君たちともいろんな話ができそうだし、稽古が楽しみですよ」。やっぱりこの人は舞台が好きなのだ。
公演は5月3日(土・祝)から6月1日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。チケットの一般発売は3月30日(日)午前10時より。チケットぴあでは、インターネット先行販売も実施中。3月26日(水)午後11時30分まで受付。
取材・文:市川安紀
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