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多部未華子、蜷川演出で人気小説の舞台化に挑む
2014年04月28日 11時15分 [演劇]
舞台『わたしを離さないで』稽古場より
舞台『わたしを離さないで』稽古場より

イギリス最高の文学賞・ブッカー賞の受賞作家であるカズオ・イシグロの長編小説『わたしを離さないで』が、蜷川幸雄の演出で舞台化される。ある宿命を背負って育てられた少年少女たちの生きざまをミステリアスかつ叙情的に描き出し、日本でも多くのファンから支持を得ている人気作だ。今回は気鋭の劇作家、倉持裕が脚色台本を担当。蜷川は「淡々とした対話で物語を運ぶ、難度の高い演劇」と脚本の印象を語っていたが、そのハードルに果敢に立ち向かっているのが多部未華子、三浦涼介、木村文乃ら注目の若手俳優陣である。名作に挑む彼らの稽古場での奮闘を追った。

舞台『わたしを離さないで』チケット情報

大掛かりなセットや小道具がひしめく稽古場で、出番に控えてスタンバイしているのは多部、三浦、木村のほか、蜷川率いる若手俳優集団「さいたまネクストシアター」所属の俳優を中心とした若者たちだ。真剣な若い瞳がいっせいに舞台に向けられる中、通し稽古が静かに始まった。鉄壁のスタッフ陣の的確な動きによってスムーズに場面転換が行われる。このセットの一つ一つが具象でありながらどこか幻想的な雰囲気を持ち、この世であってこの世でない、そんな原作小説の持つ不安定感を見事に醸し出している。その中にたたずんで言葉を重ねていく多部、三浦、木村の自然体の演技が、カズオ・イシグロの筆致から匂う寂寥感を確かに生み出していて驚かされた。落ち着いた口調と視線の強さに芯を感じさせる多部、クールな外見とは裏腹な激情を見せる三浦、初舞台にそぐわぬ大胆さと初々しさのギャップが好印象の木村。彼らの動きを穏やかにみつめる蜷川の表情に、勝算の笑みが浮かぶ。また床嶋佳子、銀粉蝶ら実力派が彼らの人生の鍵を握る大人として登場し、静謐な存在感で物語の哀切を盛り上げる。

蜷川の言葉通りに、複雑な生を与えられた若者たちの思考、生活が淡々と繰り出されていくが、その不穏なリズムからは彼らの孤独と悲痛な叫びが息苦しいほどに伝わってくる。稽古でありながら強く引き込まれ、動悸とともに終幕までを見守った。役柄から抜け出し、素に戻って談笑する多部、三浦、木村へ向けて蜷川が声をかける。「良かったよ。君たち、いい役者だ」。巨匠から送られた直球の讃辞にはにかむ様子が微笑ましい。気負いのない彼らの魅力が、より完成度の高い本番の舞台で輝きを放つ瞬間を見届けたい。

公演は4月29日(火・祝)から5月15日(木)まで彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、5月23日(金)・24(土)に愛知県芸術劇場 大ホールにて、5月30日(金)から6月3日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。チケットは発売中。

取材・文:上野紀子

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