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白井晃の『テンペスト』ダンボールの山が嵐を起こす
2014年05月07日 13時15分 [演劇]
舞台『テンペスト』稽古場より  撮影:黒豆直樹
舞台『テンペスト』稽古場より  撮影:黒豆直樹

シェイクスピアが単独で発表した最後の戯曲とされる『テンペスト』が白井晃の演出で5月15日(木)から新国立劇場にて上演される。白井版の“絶海の孤島”はどのような表情を見せるのか? 4月下旬、稽古場を訪れた。

舞台『テンペスト』チケット情報

元ミラノ大公であり、弟の策略で娘と共に海へと流され、孤島へとたどり着いたプロスペロー。12年を経て、魔術を使い、かつて自分を陥れた者たちを島に呼び寄せ復讐を果たそうとするが…。

稽古場に足を踏み入れてまず目を奪われるのが、運送屋の倉庫と見紛うような膨大な数のダンボール箱。ワゴンの上に積み上げられ複数の“島”となっており、場面によって、まるで生きているかのようにこの島が動き出す。

この日の稽古は第1幕冒頭から行われたが、プロスペローの魔術で、仇である弟のアントーニオ、ナポリ王のアロンゾー、その弟のセバスチャンを乗せた船が難破。ダンボールの山が船となり、波風に揺らされ、飲みこまれていくさまは、まるでハリウッド映画のようなダイナミズムにあふれておりオープニングから圧巻!

白井は本作を「世界一小さな『テンペスト』」と表現。「直感的に浮かんだのは、小さな病室で死を迎えようとするプロスペローのベッドをみんなが囲んで『お前はあのとき…』とか言っている姿。この島は何なのか? 集められた人々は誰によって創造されたのか? を考えたとき、彼が自分の記憶の中の人々を時間を遡って呼び寄せ、人生を集大成させようとしている話として捉えたら面白いなと思ったんです」。

つまり、ダンボールはプロスペローの“記憶”であり、劇中の世界は「記憶の集積地」。稽古場には約300個の箱があり、白井によると「最終的には千単位になる」という。第1幕では船だったが、2幕以降どのように機能していくのか興味深い。

独特の世界観だけでなくそれを具現化する俳優陣も魅力。主人公プロスペロー役の古谷一行に、その弟アントーニオを演じる長谷川初範、ナポリ王アロンゾーの田山涼成など実力派が名を連ねるが、白井は「渋すぎます」と笑いつつ「無理難題を吹っかけられる人たち」と全幅の信頼を置く。哲学者然とした佇まいで復讐を静かに司るプロスペローをはじめ、それぞれが冒頭のわずかなシーンでキャラクターをしっかりと見せつけ、存在感を放っていた。

白井は細部に目を光らせつつ、いくつもの動きを試し、最良を選び取っていく。休憩中にかかわらず、古谷と娘のミランダ役の高野志穂が父娘のシーンの稽古を繰り返す姿も。プロスペローさながらの白井の魔法のタクトの下で熱量を上げ、躍動するカンパニー。ダンボールの山から何が飛び出すのか? 楽しみに待ちたい。

公演は5月15日(木)から6月1日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場にて。チケット発売中。

取材・文:黒豆直樹

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