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ルヴォー演出『昔の日々』稽古場をレポート
2014年06月05日 10時50分 [演劇]
舞台『昔の日々』稽古場より
舞台『昔の日々』稽古場より

いよいよ開幕が迫るハロルド・ピンター作、デヴィッド・ルヴォー演出『昔の日々』。堀部圭亮、若村麻由美、麻実れいのキャストと共に、連日濃密な稽古が繰り広げられている。男女3人のすれ違う“記憶”が、削ぎ落とされた会話劇の中でどのように立ち上げられていくのか。

舞台『昔の日々』チケット情報

シンプルな家具だけが置かれた稽古場の空気は、リラックスした中にも集中度の高さを感じさせる。ルヴォーはたびたびキャストに歩み寄り、「その役をどう演じるか」よりも、「この人物の真意はどこにあるか」「あなた自身はどう考えるか」を問いかけてゆく。まず俳優がある場面を演じ、それに対して演出家がダメ出しをするという画一的な稽古ではなく、「共に考え、共に創る」という意味で、真に創造的な芝居づくりの現場だ。

ピンター作品というと“不条理”や“難解”などと捉えられることも少なくないが、印象的なのはルヴォーが繰り返し「これはコメディーだと思う」と強調していたこと。もちろん腹を抱えて大笑いする類の喜劇ではなくとも、言葉のトーンや何気ない会話の応酬の中に3人の微妙な力関係が見え隠れし、思わずにやりとしてしまう場面は多々ある。「それぞれが相手を打ち負かすための“パワーゲーム”だと思って楽しみましょう」とルヴォー。物語は静かな田舎に暮らす夫婦(堀部と若村)のもとへ妻の友人(麻実)が久々に訪れるというシチュエーションで、妻の“現在”を共にする夫と、妻の“過去”を共有する友人との、ある種対立する関係がスリリングだ。例えば、若い頃に流行していた曲を夫と友人が何気なく口ずさむシーンでは、歌いながら視線をどこに投げかけるかで、歌詞がより意味深に聞こえてくる。語感に敏感なルヴォーは、日本語の歌詞も入念にチェック。堀部と麻実の絡み合う視線の先には、風呂上がりの髪を拭く、こぼれるような色気の若村の姿……。これだけで何やら官能的な匂いが漂ってくるではないか。一つひとつの会話、しばしば訪れる沈黙に注意を払いながら3人の関係を眺めていると、攻守逆転や束縛からの解放といったように、空気の変わり目をふっと感じられる瞬間がある。そこに至るまでの道をただ与えるのではなく、俳優たちが自ら発見していくよう導くルヴォー・マジックの成せる技といえるだろう。

ピンターとの思い出話や自身の体験談などを交えつつ、どんな話題も作品の核心に迫るヒントに繋げていくルヴォー。「特に晩年のピンター劇は、解釈よりも“感じる”ことが大切」と語るその言葉に、五感を研ぎ澄ませて劇場の暗闇に身を潜めたいという欲求がじわじわと高まってきた。

公演は6月6日(金)から15日(日)まで東京・日生劇場、6月19日(木)から22日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。チケットぴあではバックステージツアー付、舞台写真付、ランチ付等の特典付チケットや2回観劇チケット等を発売中。また、6月8日(日)公演のチケットをお持ちの方は終演後のデヴィッド・ルヴォーのワークショップも見学可能。

取材・文:市川安紀

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