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原点進化劇場・AOYAMAメモリアルホラー『怪談・にせ皿屋敷』が6月19日、青山劇場で開幕した。もともとは劇作家・演出家の横内謙介が、岸田戯曲賞受賞後の1992年、自身が率いる劇団「善人会議」(現・扉座)の特別公演のために書き下ろした作品で、岡村俊一が1994年にPARCO劇場、そして1997年に青山劇場で、商業演劇としてプロデュースしている。今回はその岡村の演出で、青山劇場の閉館を惜しみながらのカウントダウンとして再演された。
時は江戸時代。御用金を横領した旗本の青山播磨(早乙女太一)は、家老の山岸次郎佐衛門(山崎銀之丞)、岡光彦兵衛(久保田創 ※山下翔央とWキャスト)、どこからともなく現れた協力者・園部上総之介(馬場徹)らの助言に従い、公儀お目付役・岩田鉄太郎(陳内将)の詮議をかわすべく、金を屋敷内の井戸に隠すことにする。井戸に誰も近づけないよう、彼らが考えついたのは、皿を割った女中を殺したことにして追放し、幽霊話をでっち上げること。この女中役に選ばれたのが、身寄りも友人もいない醜女のお菊(山本美月)だった。しかし、運命の歯車は狂い出す……。
衝撃の(?)登場から勢いのある踊りで魅せる早乙女。強がって厭世的に振る舞うが実は繊細で優しい男・播磨役が、よく似合っている。一方、馬場は、独特の存在感で、不敵かつ底知れない策士の上総之介を鮮やかに演じてみせる。初舞台の山本も後半、美しく変身。道化者の彦兵衛、飄々とした味わいの山岸らもドラマを盛り立てた。出演者同士、息の合ったアドリブが行き交うなど、舞台上は実に賑やか。観客は大いに笑い、日替わりゲストの登場にも沸きながら、気がつけば、思いがけない地平まで連れていかれる。
幽霊話のでっち上げに始まり、幾多の虚構が展開していく本作。目的のために作られたはずの嘘が、ある者にとっては夢であり目的そのものであったり、嘘を通して初めて現れる真実があったり……と、様々な「嘘」と「真」が錯綜していく。なにしろ、作品タイトルからして “にせ”皿屋敷というひと筋縄ではいかないものなのだから、当然かもしれない。私達は、虚実が簡単に区別・識別できるとは限らないことを、再認識させられるのだ。
物語はやがて、人間の醜さを目の当たりにするような、哀しく皮肉な事態を迎える。しかし、そこから、播磨とお菊の純愛が立ちのぼる点も見逃せない。幽霊より恐ろしいのも美しいのも、人間であることを、この作品は教えてくれる。
公演は6月23日(月)まで東京・青山劇場にて。チケット発売中。
取材・文:高橋彩子
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