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演出家・蜷川幸雄と劇作家・演出家の清水邦夫。協同の機会を重ねてきたふたりだが9〜10月、清水が自作を上演するため結成した木冬社の『火のようにさみしい姉がいて』(1978年初演)を、初めて蜷川が演出することになった。仕事に悩み、人生を彷徨う俳優=男には段田安則。その妻である元女優と、男の故郷で待ち受ける「姉」と名乗る女を、宮沢りえと大竹しのぶがそれぞれ演じ、舞台初共演を果たすという大きなトピックに加え、男と同じ一座の俳優には進境著しい満島真之介が当たる。
段田「清水さんの戯曲との出会いは学生時代、観るより先に読んでいたんです。その後、幸せなことに蜷川さんの演出で『タンゴ・冬の終わりに』と『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』の二作を演じることができた。詩情にあふれる清水さんのせりふは喋ると心地よく、あの独特の世界観も僕は好きなんです」
満島「確かに詩のように美しい言葉で綴られた戯曲ですよね。だからこそ僕には、まだ、この言葉にどうやって魂を乗せたらいいのか想像もできません」
段田「それは僕も同じです。僕の演じる「男」をはじめ、登場人物の誰が正気で誰が狂っているのか、それすらさだかではないし、繊細微妙にフワッと場面も移り変わっていく。しかも僕も満島君も演じるのは「俳優」の役。生業として、虚実の狭間を行き来する僕らが、劇中の虚構に迷うという多重構造が、この作品の面白さのひとつでしょうね」
満島「どこに本当の言葉と身体があるのか、読むほどにわからなくなっていくんです。戯曲の迷宮をさまよいながら、「男」と一緒に僕も自分の故郷やルーツについて考え込んでいました。でも、頼もしき大先輩・段田さんがいてくださるのでそこは心強いな、と」
段田「いやいや、稽古が始まったら自分のことで精一杯だと思うけど(笑)」
満島「それと、蜷川さん演出の『祈りと怪物〜ウィルビルの三姉妹』に出演したとき、僕は森田剛さんとずっと一緒にいる役だったんですが、その様子を見た蜷川さんが、若い頃の自分と清水さんの関係を見ているようだ、と言ってくださったことがあって。そんな大切な作家さんの作品に呼んでいただいた嬉しさを、この舞台で爆発させたいと思っています」
段田「不確かなことの多い戯曲だけれど、どんなやりとりも結局、言葉と一緒に相手の心をきちんと聞くことができれば、ふたりの間に嘘のない間や声の音で会話が成立すると思う。それを僕は心がけているし、満島君とならきっと上手くキャッチボールできるはず。加えて大竹しのぶさんや宮沢りえさんなど、信頼できる方々が一緒なのも心強いですね」
満島「また、蜷川さんに「バカ!」とたくさん言われると思いますが(笑)、稽古がすごく楽しみになりました。宜しくお願いします!」
舞台は9月6日(土)より東京・シアターコクーン、10月5日(日)より大阪・シアターBRAVA!にて。チケットの一般発売は7月12日(土)午前10時より。
取材・文:尾上そら
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