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門をくぐっても門。ヨーロッパ企画の最新作が開幕
2014年09月01日 12時30分 [演劇]
ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』 撮影:清水俊洋
ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』 撮影:清水俊洋

京都出身の人気劇団「ヨーロッパ企画」の最新作『ビルのゲーツ』東京公演が、8月29日、下北沢・本多劇場で開幕した。

ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』チケット情報

ヨーロッパ企画ほど、「ネタバレ」を避けてレポートを書くことが難しい劇団はないように思う。タイムトラベルや超能力など、物語の世界でよく見かけるファクターを題材に掲げて、その中に放り込まれた普通人たちの試行錯誤をコミカルに描く。今回は何と呼ぶべきか、作・演出の上田誠が得意とする路線のひとつ、「空間の仕組みもの」である。

舞台上には堂々たる、SFチックな巨大扉がそびえている。右横のカードリーダーにカードをかざすと、それが開く仕組みになっている。登場した5人の男たちは、ビルの上で待っている(であろう)「CEO」と商談をするために、颯爽とカードをかざす。ピ、という作動音と共に扉が開き、その向こうに階段が現れる。男たちはそれを登ってゆく。少しの暗転。明かりがつくと、舞台装置はそのままで、階数を示す札だけが「2」に変わっており、下手袖から男たちがぞろぞろと出てくる。そう、このビルは、ゲートを通るたびにまた次なるゲートが立ちふさがる、ブルース・リーの『死亡遊戯』型建造物なのだ。

「またかよ!」「まじかよ!」と言い合っていたのが、だんだん慣れてくるのが5階あたり。約束の時間を思い出して足を速めるのが6階で、メタボ男が足を引っぱり始めるのが7〜8階あたりだ。でもどうだろう、この仕組みで一旦笑わせたものの、果たしてドラマはこれ以上、どこへどう転じるのか。観客の頭上に浮かぶ疑問符。しかし、実はそこからが、上田の真骨頂である。

道中で、人と出会う。開門の難易度が増す。やがて男たちは、奇跡のチームプレーを見せ始める。何だかんだとふてくされながら、それでも結構、楽しそうである。ヨーロッパ企画作品の持ち味はそれだ。奇天烈な状況に放り込まれて、事態を素直に受け入れる者があり、そうはできずにツッコむ者もあるけれど、いずれにせよ、皆、楽しそう。気づけば観客も、登場人物たちと喜怒哀楽を同じくしている。彼らが失敗すればため息が漏れ、門が開けば、わあっと拍手が湧きあがったりする。

わいわいと階を重ねるうちに、やがて、決して容易くはない風景が訪れる。その、ちょいニガ感もまた、彼らの愛すべき持ち味のひとつだ。9月7日(日)まで本多劇場、9月10日(水)から16日(火)まで大阪・ABCホール。他に広島・福岡・名古屋・横浜公演を予定。

取材・文:小川志津子

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