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ユ・ジテと伊勢谷友介。共に1976年生まれの38歳で俳優、そして監督の肩書を持ち、国境を飛び越えて活躍する2人が、ガンに侵され声を失った韓国人オペラ歌手の復活の実話を描いた『ザ・テノール 真実の物語』で共演を果たした。劇中さながらに熱い友情を築いたという2人に話を聞いた。
ヨーロッパの名門オペラハウスで活躍し、テノール歌手の中でも貴重な“リリコ・スピント”と言われる声質で成功を収めるも、がんを患い、その治療過程で声を失ったベー・チェチョル。その復活の軌跡と彼を支えた日本人プロデューサーとの友情を描く。
同時代の実在の人物「しかも、大きな影響力を持つ歌手を演じるというプレッシャーはあった」と語るユ。「同時にやりがいのある挑戦だと感じました。まずは、どうすればオペラ歌手の“音”を自分が出すことが出来るのか? そこから勉強を始めました」と述懐する。
伊勢谷にとっては日本以外のアジア作品へは初参加。「日本映画が120%の準備をするとしたら、韓国の撮り方は意外とあっさりしてました(笑)。僕が感じる韓国映画の魅力は、カメラも俳優のように臨場感を持って存在するところなんですが、そうやってある種の“余白”を残して臨むことが画面のワイルドさを生んでるのかな? と感じました」と充実した表情で振り返る。
会ってすぐに意気投合し、俳優として共鳴した。2人の友情を描く感動シーンは数多くあるが、伊勢谷がユとの競演の楽しさを強く感じたのは、何気ない会話を交わす車でのシーン。「激しく怒って、それを受けて…というような感情のやりとりがない、どこに向かうでもない会話ですが、それがすごく快適だったんです。それは実はすごく難しいこと」と言えば、ユも「演技は一人でするものではない。思いを通わせたからこそ生まれた自然なハーモニーでした」と我が意を得たりとばかり頷く。
日韓関係が難しい局面を迎えているいまだからこそ本作が公開されることに意義を感じている。伊勢谷が嬉しそうに言う。「僕が『もしも両国が銃を向け合うようなことになったら、僕は日本の銃の前に立ちます』と言ったら、彼はすぐに『自分も同じ。韓国の銃の前に立ちますよ』と言ってくれた。それは撮影中のどんなことより感動した」。ユも伊勢谷の言葉を受けて続ける。「映画を作る上で、壁を作って孤立することは避けなくてはいけない。これからもこうした合作が行われることを望むし、僕も積極的に参加していきたいです」。
取材・文・写真:黒豆直樹
『ザ・テノール 真実の物語』
10月11日(土)新宿ピカデリー、東劇ほか全国ロードショー
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