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温水洋一と江波杏子によるふたり芝居『ご臨終』が11月5日(水)より東京・新国立劇場で幕を開ける。カナダのモーリス・パニッチが1995年に発表した戯曲の翻訳劇で、演出を務めるのは劇団「はえぎわ」主宰で高い演出力を見せるノゾエ征爾。人生の終幕、孤独に向き合うふたりの皮肉とユーモアに満ちたやりとりをノゾエはどのように捉え、形にするのか?
長年、音信不通だった叔母から「もうじき死ぬ」との手紙を受け取り、最期を看取るつもりで仕事も辞めて彼女の元に駆け付けた甥。だが叔母は彼の世話を受けつつも打ち解けず、しかも一向に死ぬ気配もない。やがて、衝撃の真実が明らかに…。
「やられた! マジか、こう来たか…」。最初に脚本を読んだノゾエの衝撃である。ふたり芝居でありながら叔母はほとんど言葉を発せず、セリフのほとんどを甥が担うという展開、終盤のどんでん返し。「潔さがあふれている本だと思いました。作家がつっかえてない感じが心地いい。僕らなら、思いついても留めてしまうものを気持ちよく本に表してると感じました。一方で生きることへの思念や死に対する距離感など、自分と似た感覚を感じることがチラチラとありました」。
ふたり芝居とは「究極的に人間が向き合うこと」。まさに本作で、死を前にした老婆とそれを見送る中年男性が見せるのは、老成や大人の振る舞いといったものではなく、自分をさらけ出し、死や孤独を前に全てをさらけ出す姿。
「単純な言い方になってしまうけど、根本的なところで人と人が寄り添う。そこが一番好きなところです。孤独に立ち向かう時、死を前にした時に誰かがいる。そのことの大きさを感じます。観る方の年齢、抱えているものによってチューニングの合うところは違ってくるでしょうね」。
稽古場では温水と江波とシーンごとに話し合う姿が目に付くが「教えられる部分が多いです」と語る。「おふたりとも解釈がとても深くて、ディスカッションの中からそれぞれのキャラクターが膨らんでいった部分が大きい」とも。
甥ばかりが喋り続けるという極端な状況で、動きも決して多くはない。「沈黙から発せられるものがすごく多い。自分勝手にたたみかける男と言葉を発しない老婆の間で、むしろ強い“対話”が成り立っている。そこから伝わってくる人間らしい肌触り、温もりを楽しんでいただきたいです」。
公演は11月5日(水)から24日(月・祝)まで。
取材・原稿・撮影:黒豆直樹
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