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演 劇
今年はじめに出演したスーパー歌舞伎を筆頭に、ここのところ舞台でのチャレンジングな活動が目立つ。2015年2月に上演される『狂人なおもて往生をとぐ〜昔、僕達は愛した〜』も、福士誠治にとって、かけがえのない挑戦になりそうだ。本作は、1960〜70年代の優れた戯曲を、若手演出家の新たな解釈と演出で復刻させる、東京芸術劇場「Roots」シリーズの第2弾。1969年に劇団俳優座で初演された清水邦夫の戯曲を、『おそるべき親たち』などで注目されている熊林弘高が演出する。狂気と言葉が錯乱する手ごわい世界に、どう立ち向かうのか。熊林を交えながら、福士がその思いを語った。
戯曲を読んで福士がいちばんに感じたのは、「答えのないものを手探りで作っていくような作品」ではないかということだった。筋立てはこうだ。彼が演じる出(いずる)は、娼婦の館で娼婦や客たちに怒りや苛立ちをぶつけている若者。だが次第に、彼らがみんな家族であり、精神を病んだ出の妄想の世界を演じていることが明らかになっていく。「だから一応は、出が狂人で家族がまともな人たちっていうことになるんですよね。でも、もしかしたら、本当は家族じゃないのかもしれないし、全員が狂人なのかもしれないし。台詞も言ってることが本当か嘘かわからない。そのうえ、表現の仕方がすごく遠まわしなので、会話がつながっていなかったりするんです。そこで心のやりとりをしていくのは、本当に修行になる。右往左往してみたいですね」。
一方、娼婦館ごっこをする家族という設定に、演劇のひとつの原型を見るという熊林。「ジャン・ジュネ作の『女中たち』のように、ごっこ遊びのなかに真実と嘘が見えてくることがある。この家族もそう。しかも、「国家」という言い方をするように、「家」というのはその最小単位。家で行われていることから、社会や国家がやっていることも見えてくる。そういう巧みな戯曲でもあるんです。また、きな臭い方向に向かっている今の時勢と重なり合うところもある。僕自身は基本ノンポリですが(笑)、覚悟して、客席に問いかけていかなきゃなと思っています」。役者としては、「自分が答えを持つことなく、そのメッセージを提示できるようにならないといけない」と福士。それは困難な挑戦になるだろうが、「観ている方が前のめりになって考えてもらえるようなエネルギーを出したい」という彼なら、ただまっすぐに狂ってくれるはずだ。
公演は2015年2月10日(火)から26日(木)まで東京芸術劇場 シアターウエストにて。その後、愛知、長野、兵庫でも公演。東京公演のチケット一般発売は11月15日(土)午前10時より。
取材・文:大内弓子
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