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クラシック
オペラ『運命の力』といえば、誰もが思い出すのがあの序曲だ。ベートーヴェンの「運命」と同様に、まるで「運命」がその到来を告げるかのようなファンファーレ。つづいてオペラに登場する劇的で美しいメロディが次々に現れる。ヴェルディの序曲、というよりオーケストラ曲として一、二を争う名曲だが、オペラそのものの上演は少ない。新国立劇場でも8年ぶりとなる本作が、4月2日に初日を迎えた。
物語の舞台はスペイン。混血児で英雄気質の主人公ドン・アルヴァーロと侯爵令嬢レオノーラは愛しあっているが、血統を重んじる侯爵によって駆け落ちを阻止される。ところが、観念して投げ捨てたはずのアルヴァーロの拳銃が事故で暴発し、侯爵は絶命してしまう。ここから、恋人たちの悲運と、レオノーラの兄ドン・カルロによる復讐の物語がはじまる。もはや主役は「運命」なのではないかと思えるほど、悲しい偶然の連続がアルヴァーロを追いつめていく。
演出家エミリオ・サージによる今回のプロダクションは、舞台を20世紀前半のスペインの国民軍に再設定したことで、「運命」とともに「戦争の狂気」が生々しく迫ってくるのが特徴的だ。カルメンのように蠱惑的に兵士を鼓舞する占い女プレツィオジッラや喜劇担当の僧侶フラ・メリトーネが生き生きと描かれ、復讐劇や教会の荘厳な祈りとの対比が鮮やか。
またアルヴァーロを演じるテノールのトドロヴィッチ、レオノーラ役のタマーをはじめ、歌手たちのアリアの絶対的な美しさには驚愕するだろう。実力派歌手ぞろいであることも大きいが、俊英ホセ・ルイス・ゴメスの溌剌とした指揮による、ヴェルディの音楽の力を目の当たりにするだけでも価値がある。レオノーラの絶望。アルヴァーロとカルロの束の間の友情。そして、神への切なる祈り。このオペラを観た後、あの有名な序曲はきっと、より一層豊かな音色をもってあなたを揺さぶるだろう。
文:高野麻衣
◆新国立劇場オペラ「運命の力」
2015年4月2日(木) 18:30
2015年4月5日(日) 14:00
2015年4月8日(水) 18:30
2015年4月11日(土) 14:00
2015年4月14日(火) 14:00
新国立劇場 オペラパレス
指揮:ホセ・ルイス・ゴメス
演出:エミリオ・サージ
出演:イアーノ・タマー/ゾラン・トドロヴィッチ/マルコ・ディ・フェリーチェほか
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