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プレビュー公演を経て、イキウメ『聖地X』がスタート
2015年05月13日 14時30分 [演劇]
前川知大  撮影:石阪大輔
前川知大  撮影:石阪大輔

劇団イキウメが『聖地X』を上演する。本作は実は、2010年に初演した『プランクトンの踊り場』を、タイトルも新たに改訂したもの。第14回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品ながら、守りに入ることなく、さらなる高みを目指す。作・演出を務める前川知大に、稽古場にて、その思いを聞いた。舞台写真は5月10日に行われたプレビュー公演の模様。

劇団イキウメ『聖地X』チケット情報

ここ数年イキウメは、春と秋に行う劇団公演のうち春公演で再演を試みている。その理由を前川は、台本をブラッシュアップしたいからだと語る。「いい戯曲というのは、様々な演出家のもとでいろいろな解釈が可能になるもの。その意味では、そのときの劇団の状況に合わせて書いた台本も多いので、改めて台本としてのシンプルな面白さを掘り起こすことで、より完成に近づけることができるんじゃないかと。そして、『プランクトンの踊り場』は、まさに、そういう作品なんです」。

『聖地X』とタイトルを変えたのも、より内容にふさわしいものをとブラッシュアップした結果だ。X=未知数。そう。これは、“未知なる聖地”の物語なのである。その場所では不思議なことが起こる。夫に嫌気がさして実家に戻ってきた妻は、そこで夫と遭遇する。その夫は同時に東京にも存在していたにもかかわらず。「ドッペルゲンガーの話です。それは決して特別なものではなく、日常的にも起こっていることであって。僕もたとえば、自分の本棚に置いていたものを、2か月前に妻が捨てていたのに気づかず、昨日も見たはずだと思った経験がありました。脳がそういう錯覚を起こさせる。自分が見ている世界は本当なのか。自分が見たいものだけを見て、あるはずないと思っているものは見えていないということがあるのではないか。そういう面白さと怖さを描きたいです」

初演でも、ドッペルゲンガー現象を舞台上で見事に表現し、驚きをもたらした。再演ではさらに、「より信じられるような形で、リアルにお見せしたいと思っています。俳優たちも確実に上手くなっていますから、もっと高いところへいけるはず」と意気込む。普段は意識することのないこの世界の見え方を、舞台でしかできない方法で提示しようとしている。やはり、演劇の力が実感できる劇団だ。

舞台は東京・シアタートラムで上演中。公演は5月31日(日)まで。その後、6月5日(金)から7日(日)大阪・ABCホールでも公演。

取材・文:大内弓子

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