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仲間由紀恵が演じる林芙美子、新生『放浪記』が開幕
2015年10月15日 12時10分 [演劇]
舞台『放浪記』
舞台『放浪記』

仲間由紀恵が主演する舞台『放浪記』が、10月14日東京・日比谷のシアタークリエで開幕した。菊田一夫が作家・林芙美子の半生を描き、故・森光子さんが1217回演じ続けてきた名作舞台。芙美子役を森さんより仲間が引き継ぎ、新生『放浪記』として蘇った話題の作品だ。

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初日前日の13日に通し舞台稽古が行われ、稽古前には出演者が囲み取材に応じた。森さんからバトンを受け取った仲間は、「森さんが大事にされてきたこの舞台を、森さんにも喜んでいただけるようなものにしたい」と話し、「私なりの芙美子像を一場一場積み重ねていければ。誠心誠意、心を込めて演じたいと思います」と意気込みを語った。

舞台は全5幕。芙美子の感情の揺れを丁寧に描きながら各幕ごとに状況は大きく変化し、仲間演じる芙美子の行き場のない“怒り”の感情が、鋭く胸に突き刺さる。カフェーの女給をしながら食いつなぎ、愛する男に裏切られ、書けども書けども作品は日の目を見ない。けれど、原稿用紙に向かうとき、その瞳は凄烈に輝く。林芙美子は万人に好かれるタイプの女性ではない。敵も多い。そんな多面的で人間くさい人物を、仲間は力強く魅力的に演じていく。

仲間を支えるのは重厚な共演陣だ。芙美子とは対照的な存在感が光るライバル日夏京子役の若村麻由美。けなげに芙美子を慕う女給・悠起役の福田沙紀。芙美子に憎々しい言葉を放つ福地貢役の窪塚俊介。芙美子を真っ直ぐな瞳で支える藤山武士役の永井大。加えて、村田雄浩、羽場裕一、立石涼子といった演技巧者が各場に鮮やかな色を添えていく。

『放浪記』といえば、4幕の木賃宿のシーンで森さんが披露した“でんぐり返し”が有名だ。自分の作品が初めて活字になり喜びを爆発させるこの場面を、仲間がどのように演じるのかは開幕前から注目されてきた。「私なりのアイディアを出しいろいろ試させていただき、ひとつの形を見つけることができました」と語る仲間が選んだのは“側転”。「表現としても大きく見え、芙美子の嬉しさが一番伝わるのではないかと思いました」とその理由を説明する。“自分なりの林芙美子”を積み重ねて辿り着いたこの表現は、見事なまでの効果を上げていた。以降も仲間は芙美子の晩年までを演じ切り、幸せとは人生とは何なのだろうか?と、観る者それぞれに深い余韻を残すラストを迎える。

森光子さんは『放浪記』を半世紀かけて熟成させてきた。仲間由紀恵という女優を得た新生『放浪記』は、回を重ねてどのような味わいを増していくのだろうか。来年1月の福岡公演まで全105回の長丁場、その熟成過程を見守っていきたい。

東京公演は、森光子さんの命日でもある11月10日(火)まで。その後、大阪、名古屋、福岡でも上演。

取材・文:高橋涼子

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