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ふたつの『グランドホテル』から浮き彫りになるもの
2016年04月14日 18時30分 [ミュージカル・ショー]
ミュージカル『グランドホテル』(GREENチーム)
ミュージカル『グランドホテル』(GREENチーム)

ミュージカル『グランドホテル』が4月9日、東京・赤坂ACTシアターで開幕した。演出は英国出身のトム・サザーランド。カンパニーを中川晃教・宮原浩暢・安寿ミラらが出演する<GREEN>と、成河・伊礼彼方・草刈民代らが出演する<RED>のふたつに分け、演出を変えて上演されることが話題となっていた作品だ。中でも結末は<GREEN=悲劇的エンディング><RED=ハッピーエンディング>とまったく異なるものになる……というところまで、事前に明らかにされていた。さっそく、両バージョンを観劇した。

ミュージカル『グランドホテル』チケット情報

物語は1928年ベルリン、ナチス台頭が近づく不穏な社会情勢の中、豪華なグランドホテルに行きかう人々のドラマを描く群像劇。ことさら飾り立てられてはいないが品のある舞台セットは、まさに高級ホテルの趣き。その美しいセットが回転し情景を変える中、ホテルを訪れる客たちの事情が点景のように綴られていく。重い病を患ったユダヤ人の会計士、借金だらけの男爵、引退興行中のバレリーナ……。それぞれの歌声が重なると同時に、彼らの人生が重なり、そして物語が一気に回りだすプロローグ「グランド・パレード」から、一気に心を掴まれる。

それまで接点のなかった人々の人生が、グランドホテルという場所で奇跡のように交錯する。そこで愛が生まれ、友情が生まれ、事件が生まれる。その過程も、両バージョンで少しずつ異なる。それは目に見えて違うものから些細なものまで様々だ。だが、その些細な選択から、物語がボタンの掛け違いのようにずれていき、最後の運命を大きく変えていくよう。結末の演出はまさに180度違う。新しい世界への旅立ちを予感させるRED、このあと戦争へ走っていく当時のベルリンの重苦しさを描き出すGREEN。……だが、思うのだ。まったく違うようでいて、ふたつの物語は、実は同じものを描き出しているのではないか、と。希望を絶たれたようなGREENの中では、新しく生まれる命――それは希望である――が、ひときわ強く輝く。一方、希望を胸に幕切れを迎えるREDの登場人物もまた1928年のドイツに生きているのは間違いなく、彼らのその後に苦難が待ち受けていることは想像に難くない。どちらも、どんな状況であろうと、貪欲に生きることのエネルギーが描かれている。ふたつの『グランドホテル』は表裏一体なのだ。実際クライマックス、ある人物に死が訪れるシーンの演出は、まさに表と裏といった見え方のする演出がなされていて、興味深かった。

とはいえ、同じ脚本と音楽で異なるドラマを生み出していく意欲作、その意図するところをきちんと見せきるには、役者には演じる力量、さらにはクレバーさが要求されるであろう。今回のキャストは全員が、その役目をきちんと担っていて、非常に見応えのある舞台を作り上げている。どちらを観ても満足のいく作品だが、できれば両バージョンを観て、そこから何かを感じ取って欲しい。

公演は4月24日(日)まで同劇場にて。その後、愛知、大阪公演あり。

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