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日生劇場で6月に上演される、NISSAY OPERA『ラ・ボエーム』。公演前に無料で様々なレクチャーが行われるのも、NISSAY OPERAの魅力だ。3月25日の「音楽レクチャー」には、本番でタクトを振る指揮者の園田隆一郎と、作曲家の加羽沢美濃が登壇し、122人の来場者の前で2時間以上、熱いトークを繰り広げた。
レクチャーの最初のテーマは “音楽から読み解く季節感や時間”。加羽沢はこの日の季節と場所と時刻、つまり「春、日生劇場、14時」をテーマにピアノを即興演奏してみせる。「昼下がりでしょう? 劇場の格調と爽やかさが感じられるでしょう? でももし夜だったら……?」と、再びピアノに向かう加羽沢。今度はムーディで暗い煌めきを放つ音が広がった。「では『ラ・ボエーム』ではどうでしょうか?」こうして話題は『ラ・ボエーム』1幕冒頭、すなわちクリスマスイブの夕方、パリの屋根裏部屋へ。その季節感や情景描写として作曲家プッチーニが施した工夫を、二人が解き明かしていく。
本作冒頭は16分休符のあと、コントラバスの半音階による音型で始まる。園田がピアノで演奏した上で言う。「この最初の休符に、独特の緊張感があって難しいんです。しかも、指揮者から一番遠くにいるコントラバスに指示を伝えなければなりません」。この冒頭が半音階でなかったら、あるいは速度が違ったら、どのような印象になるか?といった実演も。緊迫感溢れるこの半音階の後に全音階の平和な音楽が流れ、対比を作っているのも特長だと、二人は語った。
さらに、音楽が表す登場人物達の性格や物語など、幅広い話が展開。清純で病弱なヒロイン、ミミのアリアについて「楽器も少なく、リズムにもキツさがなく、柔らかい。打算がなく夢を持つミミの性格が表れている」と言う園田に対し、加羽沢が「このアリアにはミミちゃんのしたたかさが顕われているんです」。平和な音型に突如ファのシャープが入り、続いて気まぐれに音が飛んだり、歌の下でオーケストラがシンコペーションによる音を奏でたりと、“男心をくすぐる”工夫が盛り込まれていることが詳らかにされたのだった。
このほか、クイズあり歌ありリコーダー演奏あり……と、豊富な知識とユーモア溢れる趣向で終始、会場を沸かせた二人。「オペラには、難しい・敷居が高いといったイメージもありますが、やっていることは分かり易い恋愛だったり、脇の甘い男が出てきたり(笑)。それが音楽にも表れている点に注目して、本番も聴いていただきたいですね」(加羽沢)「歌手の良し悪しやビジュアルだけではなく、音も楽しんでいただきたい。この作品は、神様や王侯貴族ではなく、貧しい若者達の物語ですし、テンポ感含め、今の人達にも共感していただける世界だと思います」(園田)
なお、この公演はバリトン歌手の宮本益光が書き下ろす日本語訳詞での上演。日本語での歌により、作品世界が一層リアルに鮮やかに広がることも期待される。
公演は6月18日(日)、24日(土)日生劇場にて。
取材・文:高橋彩子
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