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懸命に生きる戦後の長崎の人々、小川絵梨子が挑む『マリアの首』
2017年04月27日 17時45分 [演劇]
舞台『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』稽古場より photo by bozzo
舞台『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』稽古場より photo by bozzo

新国立劇場が30代の演出家たちを迎えて送る「かさなる視点―日本の戯曲の力―」。若手の演出家が昭和30年代の近代戯曲に取り組むシリーズのフィナーレを飾るのは、次期新国立劇場演劇芸術監督に就任が決定している小川絵梨子による田中千禾夫の長編戯曲『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』。4月中旬、その稽古場を訪ねた。

舞台『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』チケット情報

作品の舞台は終戦後、原爆によって被爆した長崎。無惨に破壊された浦上天主堂の側で暮らす人々を、三人の女性を主軸に描く。昼は看護婦、夜は娼婦として働く鹿(鈴木杏)。とある恨みを胸に秘めながら原爆症の夫の世話をしている忍(伊勢佳世)。鹿と忍とともに病院に勤める静(峯村リエ)。浦上天主堂マリア像の残骸を保存しようと行動する女たちと、それを取り巻く男たちの、か弱くも力強く生きようとする姿を描いた、昭和34年初演の名作である。

稽古場の扉を開けると、まず大掛かりな舞台美術が組まれているのが目に飛び込んできて、作品のスケールの大きさを予感させる。続いて、壁一面に貼られた長崎の浦上天主堂にまつわる資料。昨年の秋に、小川が長崎を訪れて撮った写真も貼られている。現存する被爆のマリアの写真もあった。長崎の方言の表や、当時のキリスト教者の習慣を書いた紙など、稽古場を挙げて全員が歴史や宗教の勉強に取り組みながら作品づくりをしていることがわかる。

演技の方向付けを俳優とともに探りながら、戯曲の解釈についての俳優からの質問に丁寧に答える小川。「今この場で起こってることを重視してほしい。想像と体感の両方に演技の軸を置くことが大事」と忍役の伊勢にかけていた言葉が印象的だった。

小川は自らも舞台上にあがり、近い距離感で俳優に動きの指示を与える。舞台に寝転がってみせたり、表情ゆたかにくるくると立ち回る様子を見て俳優陣からは時に笑いもこぼれる。鹿の台詞がキッカケで、舞台美術が回り、転換する場面があるのだが、これまで数々の舞台で磨かれてきた鈴木の声は深く重く響き、本作を支える大きな柱としての存在感を感じた。

筆者が訪れた稽古時間には、三人の女性のひとり、峯村リエの出番はなかったが、献身的で寡黙な中にも深い情熱を持つ役どころを彼女がどう演じるのか、他の出演者を見ながら想像と期待が膨らんだ。

小川に、本作のテーマのひとつである「母性」にどうアプローチしていくか質問すると「母性もそれを突き放した冷たさも表れている。その葛藤を丁寧に描きたい」と答えてくれた。公演は5月10日(水)から28日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。

取材・文:落 雅季子

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