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6年ぶり7度目の引越し公演のために来日したバイエルン国立歌劇場。オペラ公演は9月21日(木)に初日を迎えるが、それに先立って来日会見が行なわれた。劇場の音楽総監督で、2019年からベルリン・フィル首席指揮者就任が決まっている指揮者キリル・ペトレンコが初来日。取材嫌いで知られる彼も出席するとあって、報道陣が詰めかけた(9月17日・東京文化会館)。
冒頭、ニコラウス・バッハラー劇場総裁の挨拶に続いて注目のペトレンコが口を開いた。いくぶんシャイな、でも穏やかな話ぶりだ。「劇場の伝統でもある来日公演が自分の任期内に実現できることは本当に名誉。期待を裏切らない上演ができると思っている。初めて日本にやってきて今日で4日目。街も人々も、そして食事も素晴らしい」と、まずは型どおりの挨拶。
さらに、質問に答える形で次のように話した。「大切なのはどんな公演にも十分に準備して真摯に向かうこと。その意味で、音楽に向かい合う際の私の一番の信条は『リハーサル』だ。リハーサルでオーケストラと一体になることができれば、本番での指揮者の役割は音楽を伝えることだけ。ステージでやることは、なるべく少ないほうがいい」
「録音が少ないのは、ライヴがより重要だから。ライヴでは音楽が生き生きとしている。録音のように確実すぎる状況で音楽をするべきではないと思う」
そして、なぜインタビューを受けないのかという質問には、「自分の仕事について語るべきではない。指揮者の仕事は指揮台の上だけにある。秘密はできるだけ多いほうがいい」とニヤリと笑った。
会見には21日(木)に初日を迎える《タンホイザー》(ワーグナー)の歌手たちも同席。ペトレンコ観を問われた彼らが一様に語ったのは、その無駄のないリハーサル、それを可能にする正確な楽譜の読みと周到な事前準備。しかもそのすべてが本番につながっていること。そのおかげで歌手もリハーサルの時間を有効に使えるし、エネルギーをより良く配分できること。等々。ペトレンコ自身の言葉を裏付ける内容で、彼の音楽づくりの一端が垣間見えるやりとりだった。
今回上演されるのは劇場にとって対照的な2演目。1978年に制作され長く愛されている、アウグスト・エヴァーディング演出の《魔笛》(モーツァルト)と、今年5月に新制作初演されたばかりの、ロメオ・カステルッチ演出の《タンホイザー》。革新と伝統が絶妙にバランスする同劇場の本領発揮という選択だ。
特に《タンホイザー》は、舞台写真を見るだけでも、ヴェーヌスの異形などかなり刺激的なのだが、「この演出の中での自分たちの役どころは?」の質問を、総裁が「明日も長いリハーサルが」とやんわり遮って会見は終了。これも音楽総監督同様、十分な準備こそが自分たちの仕事という姿勢のあらわれかもしれない。となればやはり、自分の目で見て確かめるしかない。いざ劇場へ!
取材・文:宮本明
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