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2018年度の第87回日本音楽コンクール・ピアノ部門の優勝者・小井土文哉が、3月7日(木)東京オペラシティコンサートホールにて行なわれる受賞者発表演奏会に出演する。小井土は前年度も本選まで出場し、優勝者・吉見友貴と覇を競った。当時は大学生と高校生。5歳違いだが、同じ桐朋学園で学ぶ先輩後輩だ。日本最高峰のコンクールは、その雰囲気も独特だという。
小井土「客席からの“圧”がすごいです」
吉見「特に第1予選はほぼ審査員と関係者だけですからね。品定めの感じが、より強いコンクールです」
小井土「あの独特な空気を1年目に味わったので、今回は…」
吉見「落ち着けました?」
小井土「うん、だいぶ。今度は弦も切れなかったし(笑)」
(前回の第3予選。演奏中に突然弦が切れた。)
小井土「まったく想定していないアクシデントだったから、弦を張り替えている間、集中力を持続するのが大変で。ただ、今回がそのリベンジという気持ちはなくて、僕自身は再挑戦するつもりもなかったんだけど」
吉見「そうなんだ。てっきり絶対に獲りにいくんだろうなと思って見ていました」
小井土「全然。秋から留学するつもりだったし。周囲の勧めもあって、結局、留学を延期して参加することに」
そして見事栄冠を勝ち取り、3月の受賞者演奏会ではベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番から第2〜3楽章を演奏する。
小井土「特に第2楽章をぜひ弾きたくて。僕は、緩徐楽章のきれいなところが好きなので」
吉見「そういうところが本当に上手なんですよ」
小井土「自分のいいところが出せて、かつオーケストラでやる良さがある曲を選びました。単純に、あの第2楽章のオーケストラの美しい間奏を、ソリストとして間近で聴けたら幸せかなというのも理由です。いろんなキャラクターが出てきて、色彩の豊かな曲だと思います」
小井土は岩手県釜石市出身。8年前の3月11日は中学の卒業式直前だった。自宅は被害を免れたが、50メートル先まで迫る津波を呆然と見つめていたという。「人生の中で、もうあれ以上の衝撃はないですよね。でも、あの体験がなかったらピアノを弾いていなかったかもしれません。失ったものも大きかったけれども、それを取り戻そうという力も働いた。もちろん今でもあの光景を思い出すのはつらいですが、そんな自分の内側を表現できる手段がある僕は運がいいと思います。言葉にできない感情をピアノでなら表現できる。だからこそピアノを弾いているのだと思います」
小井土は今秋からボローニャに留学、イモラ音楽院でボリス・ペトルシャンスキーに師事する。吉見も、留学を見据えながら、4月から桐朋学園のソリスト・ディプロマ・コースに進む(11月24日トッパンホールでのリサイタルも注目!)。そんな俊英たちを送り出し続けているのが日本音楽コンクールであり、受賞後のキャリアの記念すべき第一歩が受賞者発表演奏会だ。溢れ出る若い才能の輝きを、会場で、まぶしく見つめたい。
取材・文:宮本明
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