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東京発!2020へ、画期的なオペラプロジェクトが開幕
2019年07月12日 18時30分 [オペラ・声楽]
《トゥーランドット》ゲネプロの模様 (C)堀田力丸

「オペラ夏の祭典2019-20 Japan⇔Tokyo⇔World」が、いよいよ7月12日、東京文化会館で幕を開ける。オペラ・ファン注目の《トゥーランドット》。東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、新国立劇場と東京文化会館、つまり国と東京都がタッグを組んで新たな芸術を発信するという、史上初の、行政的にも画期的なオペラ・プロジェクトだ。初日を前に行なわれたゲネプロ(最終の舞台リハーサル)を見学した。

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演出に起用されたのはアレックス・オリエ。1992年バルセロナ五輪開会式の演出を手がけた演出家で、今回のプロジェクトとは「五輪つながり」ということにもなる。舞台装置は壮観だ。天井までそそり立つ壁。その壁に張り付くように無数に巡らされた階段。オリエによれば、舞台全体は、権力構造の象徴であるピラミッドを逆さにしたもの。舞台面が、すり鉢の底というわけだ。やがて、その底に這いつくばる民衆を押しつぶすかのように、巨大な舞台に乗った最高権力者トゥーランドット姫が、神のように降りてくる。オリエは今回の造形イメージのヒントを得たものとして、ブラジル人写真家セバスチャン・サルガドの、露天掘り金鉱山の写真や、有名な「エッシャーのだまし絵」の階段、退廃的な近未来を描いた映画『ブレードランナー』などを挙げていた。なるほど、その感じ、わかる。

この日は初日キャストによるリハーサル。なんといってもトゥーランドット役のイレーネ・テオリンがすごい。舞台の奥寄りで歌っても、オーケストラを突き抜けて聴こえてくる強い声。「現代最高のドラマティック・ソプラノ」の呼び名は伊達ではない。それでいて、カラフとの謎解き勝負に敗れて動揺する様子や、リューの死で変わってゆく内面の心理描写も巧みだ。

主要キャスト以外では、ピン、パン、ポンに主役級の歌い手を配しているのも、なんとも贅沢(この日は桝貴志、与儀巧、村上敏明の3人)。実は大変に出番の多いこの重要な道化役を、普段より存在感増量の個性とアンサンブルで楽しませてくれる。また合唱も約90人と大規模で、見た目も声量も圧巻の迫力だった。プロジェクトの総合プロデューサーでもある大野和士が音楽監督を務めるバルセロナ交響楽団が、24年ぶりに来日してピットに入っている。まずは万全のパフォーマンス。実は5月下旬のバルセロナでの定期演奏会に、演奏会形式で《トゥーランドット》をかけて来日に臨んでいるのだ。準備万端。このあたり、大野のマネジメントも冴える。

オペラは最後、真実の愛に目覚めたトゥーランドット姫がカラフとの愛を宣言して終わるのだが、演出のオリエはかねてから「男たちを次々に処刑してきた彼女に、ハッピーエンドがあり得るのだろうか」と疑問を投げかけており、今回はちょっと刺激的なエンディングを用意した。音楽が鳴り終わる一瞬まで、舞台から目を離してはいけない。

取材・文:宮本明

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