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老いと若さをめぐる葛藤のドラマを美しき歌手たちが演じる『ファウスト』
2019年07月17日 16時05分 [オペラ・声楽]
Faust Production image (C) ROH 2019. Photograph by Tristram Kenton

「このオペラハウスはスター歌手たちにとってとても居心地のいい場所なんだ。合唱もオケもスタッフもとても温かく彼らを迎え入れるからね。お互いに、家族と再会したような気分になるんだ」…前回の来日時にこう語っていた音楽監督のアントニオ・パッパーノ。9月に行われる英国ロイヤル・オペラ4年ぶりの引っ越し公演『ファウスト』に主演するヴィットリオ・グリゴーロにとっても、この劇場に帰ってくることは嬉しいことであるはず。2010年に『マノン』のデ・グリューでロイヤル・オペラに初登場して以来、『愛の妙薬』のネモリーノや『椿姫』のアルフレート、『ラ・ボエーム』のロドルフォなど多くの主役を演じてきた。今やMETを始め世界中のオペラハウスから引っ張りだこだが、グリゴーロの明るくピュアで努力家な性格は、英国ロイヤル・オペラととても相性がいい。

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グリゴーロはイタリア人テノールだが、フランスもののレパートリーが充実しており、マスネの『ウェルテル』『マノン』グノーの『ロメオとジュリエット』などで主役を歌ってきた。発音も美しく、瀟洒なフレージングはイタリアもの以上に彼の魅力を引き立てる。中でもオッフェンバックの『ホフマン物語』のホフマンは当たり役で、次々と登場する悪役に苦しめられる演技は、表現力豊かなグリゴーロにはまっていた。『ファウスト』は『ホフマン…』に少し似たところがある。老いたファウストに死後の魂と引き換えに若さを売るメフィストフェレスは、ホフマンに登場する悪役4役とどこか重なる。

メフィストフェレスを歌うのはオペラ・ファンにはお馴染みのバリトン、イルデブランド・ブルカンジェロ。前回の引っ越し公演では『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールを歌った。グリゴーロとダルカンジェロの葛藤に満ちた掛け合いは、今回の来日公演でも大きな見どころだ。ふたりともグッド・ルッキングで芝居が達者、美声な上に美形なのである。マルグリートにはパッパーノも「驚異的に成長している」と太鼓判を押すレイチェル・ウィリス=ソレンセン。彼女もとても美しい歌手だ。デイヴィッド・マクヴィカー演出はドラマティックで驚きに満ち、引き込まれる仕掛けがたくさん潜んでいる。ファウスト、メフィストフェレス、マルグリートの有名なアリア、デラックスな合唱、洗練の極みのオーケストラ…魅力満載のオペラだが、なぜか日本での上演は極めて少ない。『ファウスト』を生で観るという貴重な経験を味わうためにも、劇場に足を運ぶ価値がある。旬の歌手の「今」を間近で聴ける喜びは、何物にも代えがたい。

文:小田島久恵

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