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11年ぶりの新制作となる東京二期会の《椿姫》。初日が1週間後に迫った2月12日、公演の指揮者ジャコモ・サグリパンティによるプレトークが開かれた。赤丸急上昇中の若きオペラ指揮者はこれが初来日。詰めかけた約100人の熱心なファンを前に、軽妙に、しかし誠実に語った(自由学園明日館講堂)。
1982年生まれのサグリパンティは、目下世界の主要歌劇場を次々と制覇し続ける逸材。今回もバイエルン国立歌劇場でアンナ・ネトレプコ主演の《トゥーランドット》を指揮してきたばかりだ。2016年には英国の「オペラ・アワード」最優秀若手指揮者に選出されている。
自らの正式なオペラ・デビューを、2010年イタリア南部の街マルティナ・フランカのヴァッレ・ディートリア音楽祭でのドニゼッティ《パリのジャンニ》と答えたサグリパンティ。この音楽祭は、知られざるベルカント・オペラを多数上演することで知られるが、彼自身、これまで40以上のベルカント・オペラを指揮しており、ヴェルディとベルカント・オペラには密接な関係があるのだと語った。
「(ベッリーニの)《ノルマ》と(ヴェルディの)《ナブッコ》を、知らずに聴いたら、作者が逆だと思うほど似ています。ベッリーニをヴェルディが発展させたのです」
《椿姫》でも、音楽的に難しいヴィオレッタ役に比べて他の役はシンプルで、たとえば有名なジェルモンの〈プロヴァンスの海と陸〉が平凡(!?)なのは、古い社会の象徴として(古い)ベルカント風に書いているからだと教えてくれた。
《椿姫》の人気の理由として、どの時代にも起こりうる普遍的なテーマとメロディの美しさを挙げたサグリパンティ。なかでも聴きどころは「ワルツ」だという。
「当時ヴェルディがパリで聴いたワルツがさまざまな場面に出てきます。有名な〈さようなら過ぎ去りし日々〉もワルツですね。私が1番泣ける美しいワルツが(第2幕でヴィオレッタがアルフレードに別れを告げる)〈私を愛してね。私があなたを愛しているのと同じくらい〉です。なぜ泣けるかといえば、あそこで初めて本当のヴィオレッタが描き出されるから。魂をえぐられるようなシーンです」
ちょっとしたアクシデントもあった。トークの途中で震度1の小さな地震。すぐに収まったが、サグリパンティは「ちょっと怖かった」とお茶目に告白。「イタリアだったら全員が外に逃げたと思うよ!」と笑わせた。
最後はソプラノの柴田紗貴子とテノールの澤原行正のふたりが《椿姫》から3曲を歌うミニ・コンサート付き。
今回の《椿姫》では、宝塚歌劇団の新鋭演出家・原田諒を起用し、ダンサーとして元タカラジェンヌらが出演することもオペラ・ファンの話題だ。ヴィオレッタ役は日本を代表するプリマ大村博美と、初の大役に抜擢された新星・谷原めぐみのWキャスト。大きな注目を集める二期会《椿姫》は、2月19、20、22、23日の4公演。東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。
取材・文:宮本明
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